網膜色素変性症の世界
網膜色素変性症とは?
「網膜色素変性症」という、なにやら長くて難しそうな病名。私たちはよく、短くして「色変(シキヘン)」とか「RP(Retinitis
Pigmentosaの略)」と呼んでいますが、ここではRPと呼ぶことにします。
このRPは目の奥にある網膜に変性が起こり、光を受けて神経に電気信号を送る最初の入口である視細胞が機能低下し、徐々に光を感じられなくなってゆく疾患です。症状は進行性ですが、一般的に極めてゆっくりと進むため2、3年ではどれくらい進んでいるのかほとんど自覚できないほどです。簡単な医学書では「失明に至る。」などと書かれている場合がありますが、進行しつつも最後まである程度の視力を保てる事が多いと言われています。
治療法は?手術はできないの?
残念ながら現代の医学では、治療や進行を遅らせるための治療薬、手術がありません。そのため、研究活動が行われており、国の特定疾患(難病)の一つに指定されています。
最近では、遺伝子治療、人工網膜(眼)、再生医療など、各分野でめざましい研究の成果が発表されています。しかし、臨床応用へはまだまだ時間がかかりそうです。
どんな症状なの?
RPの症状や進行具合は人によって様々です。幼児の頃から症状の現れる人もあれば、50歳を過ぎて自覚する人もいます。しかし概ね20代後半から30代で目の異常を感じ、眼科を受診される方が多いようです。
RPの代表的な症状は、夜盲(暗順応の低下、いわゆる鳥目)、視野狭窄、視力低下です。子供の頃、夜友達がどんどん走ってゆくのに自分は暗くて付いて行けなかったり、溝に落っこちたり、球技が苦手だったり、足元のゴミ箱を蹴飛ばしたり…。そんなことを大概の患者が経験しています。
一般的な視野狭窄は、外側から徐々に見えなくなっていくタイプです。ただ、焦点の合う中心視野が比較的長く残るので、歩行が困難になっても文字を読むことができます。視力が長く保たれるため病気に気づきにくく、視野がかなり狭くなってようやく自覚するケースもあります。
反対に真ん中から見えなくなる人は、視力が急激に低下し、文字を読むことが困難になりますが、周りが見えているので動き回るのが比較的楽です。
その他にも強い光が眩しかったり、白くぼやけたり、目の前にチカチカと電飾状のものが光ったり、色の見分けができなくなったりする人もいます。また、まれにアッシャー症候群という聴力障害を伴う人もいます。