【藤沢市 志屋京作】
* 目を病んで 竹輪の中に 妻がいる
* 「綺麗です」 見えぬ私が 太鼓判
* どーしても 好みの人に 道を聞く
* 右側に コップ置かないで こぼすから
* 「気をつけろ!」 歩きスマホと 酔っ払い
* 「大丈夫!」 母は臭いで 確かめる
* 花を活け ヘルパーを待つ 要支援
* 落ち葉分け 杖で己の 弧を描く
* 木漏れ日に メガネ付けたり 外したり
* 遠花火 窓に顔寄せ 音を見る
【横浜市 月見草】
* 風車や星も見える 不思議な目
(目の前を絶えず光ったものが飛び交ったり、風車のようなものがクルクル回ったりしてそれらが出現しては消えます)
* 気休めと 知りつつ今朝も 飲む薬
* 雨の日は 白杖たたみ 足早に
(雨降りは比較的よく見えていました)
* 眩しくて 見知らぬ人に 会釈する
* 間違って 履いたこの靴 誰の靴?
* 今日も霧 明日は晴れるか 見えるのか
(目の症状が進むにつれ、目に映る物は全体的に白っぽく見えます)
* いつからか 勘が頼りの さじ加減
* 前もって 教えて欲しい 曲がり角
* こっちだよ 孫の手引きに 笑い出す
* 白杖の 鈴の音響く 日暮れ道
【横浜市 清水 秀雄】
世界網膜の日ツアーシリーズ (2015〜2017)
―in群馬(2015)
*夕暮れの 車窓に映える 赤城山
(夕焼けが山の稜線に映えてきれいでした)
*湯けむりと 繭に癒され 上州路
(伊香保温泉並びに富岡製糸工場見学時の繭ちゃんに癒されました)
―in三重(2016)
*四百畳 遠くに霞む 「えりか」さん
(こんな広い畳の宴会場は初めてでした、「えりか」さんはステージ上のゲスト歌手)
*わっ、近っ! 足が生えたか 夫婦岩
(昔は遥か遠くに見えた記憶がありましたが)
*はぐれまい 電車ゴッコで 伊勢詣り
(参拝客が多くて、はぐれまいと必死でした)
―in宮城(2017)
*スイスイと その足運び 健常者
(五大堂手前の踏み外しそうな「透かし橋」、皆さん躊躇なく渡りました)
*伊達さまも 両目で睨めば 天下人(てんかびと)
(「瑞巌寺」を再興した独眼竜政宗公、没後に描かれた肖像画は全て両目が開
かれているそうです)
*眼を閉じて 浮かぶ島々 ガイドより
(実際見えないが、船内ガイドから松島湾260余の島々を思い浮かべました)
*お目当ての 土産リュックに 目が笑う
(皆さん結構買い込みました。アベノミクスが浸透したのかな)
【横浜市 澤田 有希】
* つり革が つかめず誰かの 頭つく
* カギさして 開かないここは 下の階
* コーヒーの 砂糖こぼして まだ微糖
【横浜市 原 邦夫】
* 見えづらい このもどかしさ 分かるかな
* 外出は 昼の長さに 比例する
* 顔よりも 声に惹かれる 異性かな
* あちらです 指しても分からず 連れてって
* ご馳走も 何時の方に なにがある?
【小田原市 井手 章】
* 混雑の 優しい声に ホッとする!
* 駅ホーム 戸惑う自分 そっと手を!
* ありがとう 困ったときの お声がけ!
* 今日もまた 駅員さんの 肩を借り!
* もう5時だ つるべ落としに 急ぎ足!
* ケガのもと 余裕を持って 出かけよう!
* 暗い道 背中追いかけ 逃げられた!
* はまりすぎ ポケモン夢中 水たまり!
* すみません スマホの人に あたまさげ!
* しっとりと 恋に落ちたい みぞに落ち!
【横浜市 吉川 弘】
私の目は見えているようで見えてない、見えてないようで見えている不思議な目です。
その上、暗いと見えず明るいと眩しくて見えにくいという厄介な目でもあります。
* 視野欠ける 暗い眩しい やっかいな
* そっち見ているが そこここ見えてない
* 一人来た あら子供づれ 犬もいた
* 横見えず 肩ぶつけては すみません
* 指さした その指先が 消えている
* よーく見て 注いだお酒が 猪口の外
* 薄暗い 赤黒緑 同じ色
* まだ見えているが 白杖手離せず
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