●得々講座「白内障医療講演会」のご報告

岸 利勝

 冬晴れの2月8日(日)、かながわ県民センターに於いて、得々講座「白内障医療講演会」が開催され、講師に東京慈恵会医科大学眼科学講座講師で、医学博士の林孝彰(はやしたかあき)先生をお招きして、「網膜色素変性の白内障手術に対する考え」と題した講演がありました。

 会場の4階会議室(60人収容)は、講演会直前に60席がすでに満席となり、開催時間の13時には聴講者が更に増え、立ったまま聴講する姿が多く見受けられました。最終的に聴講者は当初の予想をはるかに超え80名となりました。

 今回のプログラムは、林孝彰先生の講演と質疑応答に加え、特別参加として林先生の患者で、JRPS高知県支部を立ち上げる準備会責任者である、原敏博さんの活動と眼の症状などの体験談、難聴者の情報保障としてアシストホーン(株)の協力、そして休憩時間に、JRPS本部・神奈川支部の紹介、「網膜色素変性症ってなあに」のパンフレットや、JRPSカレンダーと林先生の講演録「”RP”の遺伝について」などを展示し希望者に提供、更に遮光メガネなどの福祉機器ミニ展示・相談を行うなど、限られた時間を有効に使い、たくさんの内容を盛込んだ欲張りプログラムで、約3時間にわたる講演会でした。

 「網膜色素変性の白内障手術に対する考え」の講演では、初めに網膜色素変性症(以下”RP”と記載する)の一般的な症状の説明があり、私を含め多くの仲間が、普段あまり”RP”のことを気にしないようにしてはいるものの、改めて”RP”症状の説明を聞くと、自分の眼がこんな症状で徐々に進行し、自分の認識では見えそうな気がしても、実際は見えにくく見えない状態になってしまったのかと、今更ながら痛感せざるを得ない状況で、一瞬落ち込んだ気持ちになりました。

 その後講演会の主題である”RP”の合併症で、一番多いと言われている「白内障」の講演があり、同じ「白内障」でも加齢による発病と、”RP”の合併症による発病では症状に大きな違いのあることが説明され、特に”RP”の合併症で発病した場合、加齢で発病したより重篤であることが、説明を聞き良く理解できました。

 我々が一般的に「白内障」で知り得ている情報は、「白内障」つまり水晶体全体が混濁、見えなくなると言った極一部分ですが、実際”RP”患者が発病した「白内障」は、加齢白内障とは異なり、”RP”の病状と大きな係わりがあることが説明され、直接深いつながりのあることが分かりました。

 「白内障」手術の大きな目的は、現状より少しでも見えやすく、そして視力回復をさせることが、最大の目的であることに変わりはないとの説明もありました。

 ”RP”患者の場合、データによる統計から見る限り、「白内障」術後の経過は、大多数の患者が視力回復を確認され満足して、もしくは手術前と視力は変わらないが、見え方が良くなったことが確認されていますが、その半面20%前後は視力回復が確認されず、手術前より悪くなっていることが確認されているとの説明もありました。

 これらの結果から、“RP”患者が「白内障」手術を受ける場合、手術をすればすべての患者が、視力回復を望めるものではないと言うことを認識した上で、眼科医から言われるまま受けるのではなく、「白内障」術後の状態、すなわち”RP”の症状を考慮に入れ、どの程度の視力回復が望めるのかなどの検査を受け、どの程度視力回復が可能なのか、眼科医と良く相談してから、自分で考え決定することが望ましいと説明されました。

 後半は、日頃からの疑問や悩みなどに対する質疑応答で、聴講者から質問が多く出され、直接先生から説明を受けながら、活発なやり取りで納得のできる説明を聞けたのではないかと思われました。

 講演会終了後も、十数人の聴講者が直接先生から話を聞こうと、先生の前に行列を作り、順番に話をして説明を受けており、最後の聴講者が話し終わったのが、講演会終了後20分を過ぎた16時10分頃でした。

 今回の講演会では、支部の活動支援と治療法研究基金として、聴講者から募金をいただきまして、大変有難うございました。 尚、今回の講演も「講演録」の製作発行を予定、講演内容すべてを掲載する予定でおります。