横須賀市 ・ 内田 知
ある駅の有人改札の前。ウッチャンが駅員にホームまでの誘導を頼んでいた。駅員の対応は、ここにいるのは自分だけなので動けないと言う。そして、誘導ブロックを使っていけば、ホームまで行けると、あまりの軽薄な一言。ウッチャンは思った。(こいつをこのままにしては世の中のためにならない)と。てことで、ジャジャジャーン、ウッチャンは正義の味方、ウッチャンマンに変身するのである。
ウッチャンの行動に駅員は逆ギレ
誘導ブロックを使ってと言われたウッチャン。「そうですよね、視覚障害者のために設置されているんですから…。でも、初めてなんで、どう進んで行けばいいのかわからないので教えてもらえます」と尋ねた。すると、駅員は「足下のブロックをそのまま進んで左に曲がって、それから…」と説明した。それを聞きながらうなずくウッチャン。聞き終わると「歩いていて忘れるとまずいので、もう1回…」と一言。これに、仕方なく繰り返す駅員。2回目を聞き終わると「有り難うございました。で、わかんなくなったら戻って来ますから、そん時はよろしくです」と言ってその場を離れた。
歩き出すウッチャン。ところが、ブロックに沿ってある程度進むと、突然回れ右をしたのである。なんと、改札口へ戻ったのです。でもって、「すいません、ヤッパわかんなくなりました。もう1回説明してください」と駅員に頼んだ。
まぁ、駅員は驚きますよね。そんでもって、説明するしかないわけです。「忘れないでくださいよ」と念を押してから説明する駅員。それを、うんうんとうなずきながら聞くウッチャン。だが、心の中では(これで終わると思うなよ)とつぶやいていたのである。
駅員の説明を聞き終わると「今度は大丈夫だと思います」と言って歩き出す。そして、またある程度進んでから回れ右したのである。またまた現れるウッチャンに、「なんなんですか」と逆ギレの駅員。
「そんなに怒らないでくださいよ。最初に言ったとおり、初めて利用するからわからなくなってしまったんです。頑張りますからもう1回説明してください。このままでは電車に乗るどころか、ホームにも行けません」と、頭を下げて頼むウッチャン。
改札口は、電車に乗るためにはかならず通らなければならない場所。となれば、たくさんの利用客がいる。そんでもって、行き先がわからなくなった人が尋ねて来るのは駅員のいる有人改札。そんな場所で、視覚障害者が頭を下げて何かを頼んでいる。それなりに人の眼に留まる。こうなると現れるのが、ウッチャンマンのツヨーイ味方、オバタリアン。
「どうしたの」の一言から始まり、「あんた駅員でしょ。眼が見えない人が困っているんだから…」と責め立てる。その横で、「すいません、お願いします」と頭を下げる視覚障害者。こうなると、駅員に逃げ場はない。
そして、フトもらした駅員の一言「誘導する駅員を呼びますから…」。その言葉に「最初に、そう頼んだんですけど…」とウッチャン。これに、「すいません」と返事をする駅員。で、たたみかけるように「私は、あなたに誘導してほしいと言ったんではありません。誘導してくれる人を、とお願いしたんです。忙しいのはわかりますが、だからと言って適当な対応をしていいとは思いません。私の言っている事は間違っていますか」と、今までの態度は一変。強い口調で話すウッチャンでした。
罪を憎んで人を憎まず
何も返事をしない駅員。そこへ、「お待たせしました。どちらへ行かれますか」と誘導してくれる駅員が声をかけてきた。それに、「すいません、誘導ブロックを使って行こうとしたんですが、わからなくなってしまって」と答えるウッチャン。すると、「確かに、視覚障害者の方々のためにブロックは設置してありますが、無理をなされないでください。お声をかけていただければ誘導しますから」と言って来た。
ウッチャンは、この言葉を待っていた。そして、「そうですか、こちらの駅員さんに頼んだら、誘導ブロックがあるからと言われたので、やってみたんですがうまくホームに行けなくて…」と話した。すると、「エッ」と驚きの言葉の後、ほんの数秒の間があった。この数秒間に何が起こったのかウッチャンにはわからない。がしかし、改札口にいた駅員が身動きできないほど凍り付いたのは言うまでもない。
ウッチャンを電車に乗せた駅員が、その後どんな行動したのか。改札口にいた駅員が、その後どうなったのか。きっと、厳しい時間をどこかの場所で過ごす事になっただろう。
駅に、誘導ブロックは設置されている。だが、どのように設置されているかわかっている駅員はゼロだろう。それを、わかったフリをして、その場しのぎの適当な説明をする。これをウッチャンマンは許さない。
さて、今回の話は、7〜8年ほど前の出来事である。罪を憎んで人を憎まず。あの時の駅員が、心優しき駅員となって今も働いていてほしいと願っているウッチャンマンなのです。