こちらも「視覚以外の情報」に注意を向けて考えてみてくださいね。
Q1.行きたいところには、どうやって行くのですか。
A. いつも行くところは、最初に何度も歩く練習をして、手がかりを覚えておいて歩きます。
見える皆さんも、例えば1年生になったときに、学校に行く道を覚えるときに、「家を出たらまず右に行って、二つ目の道の角にいつもきれいな花を植えている家があるから、そこを左に曲がって、そうすると大きな白い家があるから、その前をとおりすぎて、今度は公園があるから、それを行き過ぎたところを右に曲がって、大きな通りにでたら、信号を渡って少し右に行くと学校に着く」なんていうふうに、道を覚えたと思います。
皆さんはこのときには「見えるもの(きれいな花とか白い家など)」を手がかりとしてどの道を行けば行きたいところに行けるのかを覚えると思います。見えない人は、その手がかりが「音や足で踏んだ道路の路面の感触や路地に接したときに歩道からわずかに降りるという段差、郵便ポストや電柱といったような、滅多なことでは変わらないものに杖があたるという感覚を手がかりとして、行き方を覚えます。時には空気の流れの微妙な違いを感じ取って手がかりにすることもあります。
要するに、「手がかりにするもの」がちがうだけで、見える皆さんと違いはないのです。次に、はじめて行くところはどうするのかです。
皆さんは「はじめて行くところ」へは、きっと地図を見ながら周りの景色とその地図を照らし合わせながら行くと思います。地図からは視覚情報しか発信されていませんので見えないとその情報は伝わってきません。ですから、その地図を言葉にして覚えます。例えば「駅を出たら右に歩いていくと本屋があるから、その前の横断歩道を渡って、そのまままっすぐ行くと今度は○○銀行があって、それを行き過ぎたら左にまがる」などと。でも、地図が頭に入ったとしても、景色も視覚だけに情報発信しているものですよね。それを視覚以外の情報でキャッチするために、そのときに周りを歩いている人に聞いて確かめます。「このへんに本屋さんがあってその前に横断歩道があると思いますが、どのあたりでしょうか」などと聞きます。すると、「もう少し先ですね」とか「少し行きすぎていますよ」などと返事がかえってきて、たいていの場合は、聞いた所まで連れていってくれますから、その親切にたよることにしています。
こうして、「頭の中に入れた言葉の地図」と「周りの人に聞いた情報」の組み合わせで、目的地に着ことができます。
他には、「ガイドヘルパー」とか「誘導ボランティア」と呼ばれる見えない人を目的地まで連れていく専門の働きをしている人がいますので、そのような人をたのむこともあります。
Q2.知らない場所に行くときに困ることは何ですか。
A. はじめて行くような知らない場所に行くときには、あらかじめ行き方を聞いて、頭の中に入れておいてから行くのですが、その準備がうまくできなかった時には情報不足となりますので「困る]という状況になります。また、準備ができていたとしても、要所要所で、周りに歩いてくる人に聞きながら行くのですが、だれも来ないときには周囲の情報について聞ける人がいないので、これまた情報不足となり「困る」という状況が生まれます。
街は視覚にだけ発信している情報だらけです。物がある建物があるということももちろんですが、建物名や標識は全てと言っていいほど文字情報しかなくて「見える人にだけ配慮された情報提供」がされています。
見えない・見えにくい人は情報から仲間はずれにされてしまっているので、その必要な情報を得ることができないので「困る」という状況が起こります。
Q3.出かけるとき、怖い所はどこですか。
A. 人が「怖い」という感情を持つときは、情報がとても少なかったり安全が脅かされるときです。みなさんもそれは同じですよね。見えない人も同じです。
見えない人は目からの情報がありませんから、それだけでも身体を動かすには情報不足であることは確かです。ですが、それを周囲の音や白杖・足裏などから伝わる情報を最大限に利用することでカバーしています。それと「覚えている情報」もフル活用しています。
ですから、見える人はその場の情報が目からすぐに入って行動に活用することができますが、その情報が入らない分、周囲の状況が急に変わることで「覚えている情報」が活用できなくなった場合、見えない人はある意味[怖い]という感情が起こるといえるでしょう。
ですから、いつもならば何もないところに突然何かがあった、工事をしていて道の状況が変わった(大きな音も出ているでしょうからその工事の音にかき消されていつも利用している音の情報が活用できなくなるなんてこともあります)、音や気配もなく何かが近づいてくる(歩道を猛スピードで走ってくる自転車は、気が付いたときにはもう目の前だったりしますし、歩きスマホの人にぶつかられたり)、そんなことが情報が入らなくて[怖い]と思う時です。
また、安全が脅かされるときですが、これは皆さんと全く同じです。
例えば電車のホームは、皆さんだって「落ちそうで怖い」なんて感じないでしょうか。とても広い道路を横断するときなんかも。見えない人は情報不足で歩きますから、皆さんの怖さに情報不足の分が加わっただけ怖さが強くなると言ってもいいかもしれません。
Q4.点字ブロックの上に自転車が置いてあるときは、どうしますか。
A. 杖で感知できた時には、仕方がないのでよけて歩きます。自転車がなくなったところで、また、点字ブロックにもどるように努力します。白杖も万能ではありませんから、感知できない時もあります。そのようなときには自転車を倒してしまうこともあります。
Q5.もし白杖を外で落としてしまったら、どうしますか。
A. 足下などに落ちた時には、杖が倒れたときの音をたよりに見当をつけて地面をさわってみると探せる時もありますが、大きくはじかれてしまって、遠くに行ってしまった時や、周りに人がいる時には、周りの人に聞いて拾ってもらい、手に持たせてもらいます。
Q6.音のない信号のところでは、どうやって青になったことがわかるのですか。
A. 自分と同じ方向に渡ろうとしている人が歩き始める足音や車が発車しようとするエンジンの音、そして自分と交差する方向に走っている車が止まる音を手がかりにして信号が変わったであろうことがわかります。でも、同じ方向に渡る人がいなかったり、車の交通量が少ないとよくわかりませんので、「度胸」で渡るしかないときもあります。もし、横断歩道に白杖を持った人がいたら、「今は赤です。青になりました。」などと声をかけて信号の色という視覚情報を声という音声情報で伝えてもらえると確実に信号の情報がわかりますので安全に渡れますので助かります。
Q7.災害で避難するときは、どうしますか。
A. 災害の時は、まず道などが、いつもの様子と大きく変わっていることが予想されますので、「覚えている情報」の活用はできなくなると思われます。いろいろな物が散乱していることも予想されますので、見える人といっしょに避難することが必須と思います。
Q8.街中で人にたずねるとき、どうやってコミュニケーションをとりますか。
A. 足音など、人が来る気配を感知して、その気配が近づいてきた時に「すみません
」などと声をかけて、返事をしてくださったら、その方向に向いて話をします。