●ウッチャンの落書きストーリー
  ・・・ あんまんVSアンパン ・・・

横須賀市・内田 知

 昨年11月のある日の午後、お袋さんがウッチャンに、「コンビニ行くけど何か買ってくる物ある?」と声をかけてきた。「別にないよ」と答えると、「ホントにないの?」と聞き返してきた。その言葉に、「ウーン、そこまで言うならあんまん買ってきて」と返事をすると、「一つでいいの?」とお袋さん。これに「アー、一つでいい」と答える。「わかった」と返事をして出かけて行ったお袋さんだった。11月に入れば寒さが身にしみる日もある。そんな時、小腹がすいたら、なぜか食べたくなるのが中華まんじゅう。実は食べたいと思っていたウッチャンだった。それもあんまんがである。

コンビニ袋にホカホカ感がない!
 帰りを待ちわびる事10分。お袋さんが帰ってきた。頭の中はホッカホカのあんまんのウッチャンの元へ、「ハイ、買ってきたよ」とお袋さん。「アリガト」と差し出したウッチャンの手にコンビニの袋を載せるお袋さん。

 その瞬間、ニンマリしていたウッチャンの顔が豹変した。それもそのはず、あのホカホカ感がないのだ。(ナンダコリャ!?)と思いながら袋に手を入れると、密封されたビニール袋に入った手のひらサイズのやわらかい物体。ここまで説明すれば誰でも想像できるだろう。思わず「オフクロ、これアンパンじゃんか」と声を上げるウッチャン。その声に「だからあんまんでしょ?」と言い返すお袋さん。「おれが頼んだのはあんまん。これはアンパンだろうが」とウッチャンも言い返す。これに「何が違うの?」と不思議がるお袋さん。

 この言葉に、「だから、これはアンパン。おれが頼んだのはあんまん。違うじゃんか」と呆れ顔で言うウッチャンからアンパンを取り上げ袋に書いてある文字を読み始めたお袋さん。そして、「ホラ、あんまんじゃないの」の一言に、「袋に書いてあるのを声を出して読んでみな」とツッコムウッチャン。これに、面倒くさそうに読み始めるお袋さん。そして、「アンパンと、読み上げた瞬間、「今、なんて読んだ?」とウッチャン。これに、「アンパン」と答えるお袋さん。それを聞いて、勝ち誇ったように、「おれが、買ってきてと頼んだのはなんだ」と聞くと、「アンパンでしょ?」とかるく受け流すようなお袋さんの一言。このボケた返事に、完全にキレたウッチャン。

 何か言ってやろうとするのだが、お袋さんのボケた一言に笑ってしまう。笑ってしまうから、余計に腹が立つウッチャンだった。腹が立てば、一言二言言い返したくなるもの。となれば、ウッチャンの相手はお袋さん。

あんまんの説明を始めるが…
 漫才のボケとツッコミそのままの会話となる。「アンパンと読んで、それが声に出したらなんであんまんになるんだよ」と、ウッチャンのツッコミに、そんなこと言ったっけ?」と平然と答えるお袋さん。その一言に言い返す気力を失いかけるウッチャンだった。だが、ここで負けてなるものかと、あんまんの説明を始めるウッチャン。「コンビニ入ったらレジのそばに、おでん売ってんだろ」。それに、「あった」と返事をするお袋さん。「そのおでんのそばに、冷蔵庫の大きさぐらいの周りがガラスになってるのが置いてあるの」と言うと、これに、「あったあった。ポテトとかソーセージなんか入れてあるのでしょ?」の返事に、「その冷蔵庫みたいなやつに、肉まんとかあんまんとか書いてなかったか」と聞くと、「書いてあった」と返事をした。

 その言葉を聞いて、(やっとたどりついたぁ)と思いながら「そん中にあんまんがあるんだよ。なんで、店員さんにあんまんくださいって言わなかったのかな」とウッチャン。すると、「あんまんが食べたかったんだ」とお袋さん。

 この言葉に、おさまりかけていた怒りが復活。「あんまん買ってきてと言ったじゃんか」と言い返すウッチャンに、「そうだったっけ?」と、お袋さんの決め台詞の返事。

アンパンを温めればあんまんになる?
 そしてさらに、「アンパンとあんまんと、どこが違うの?」と言葉を続けた。それを聞いて、のけぞるウッチャン。しかし、ここまできて(負けてたまるか)と思いながら、「アンパンは、あんこが入ってるパン。あんまんは、あんこが入っているおまんじゅう」と説明。これに、「あんこが入ってるんだから、これでいいんでしょ?」とお袋さんの返事に、(手ごわいな)と思いながら、「アンパンはパンだから温かくない。あんまんは、温かいの。ホクホクしてんの。オフクロだって食べた事あるだろ」とツッコムと、「アー、あるある」とお袋さん。この返事に(あるあるって、言うなら間違えるな)と、怒鳴りたいのを堪えるウッチャンだった。

 しかし、相手はお袋さん。ウッチャンをトコトン追いつめる。「温かいのが食べたかったんだ。しょうがないねぇ、これをレンジで温めてあげるよ」と言って部屋を出ようとするお袋さん。それをあわてて引きとめながら、(アンパン温めてあんまんになるか)と心でツッコムウッチャン。だが、「温めなくていい。そのままでいいから」とお袋さんに何かに負けたように力なく言った。ここまでくると、ウッチャンには戦う気力はもうない。あるのはお袋さんからアンパンを受け取る力だけだった。