●会報 第99号

 音声ソフトでご利用の皆様へ
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JRPS神奈川会報第99号

(表紙)
1971年 8月 7日 第三種郵便物認可(毎月6回 1の日・6の日発行)
2021年 5月12日発行 SSKA 増刊通巻 第10501号
SSKA
あぁるぴぃ 第99号 KANAGAWA 2021 summer

会報誌創刊号「1996年5月発行」の表紙を掲載)

私たち自身で
治療法の確立と
生活の質の向上を目指す


**この会報誌は「NHK歳末たすけあい」の配分金により作成しています。 **
JRPS神奈川
(表紙終わり)

■目次

<巻頭言>
2 私のRPと患者会

<特別寄稿>
3 JRPS神奈川会報誌100号に寄せて
4 会報は会と会員・会員同士をつなぐ架け橋

<JRPS神奈川の活動>
7 総合カレンダー

<開催予定>
8 定期総会・医療講演会のご案内

<ご報告>
11 得々講座:医療講演会の報告
13 得々講座:「スマートスピーカーのある暮らし」の報告
14 第10回西湘地区交流会の報告

<情報コーナー>
16 「第三回ロービジョン・ブラインド川柳コンクール」の報告
20 サキサキ先生の簡単パソコン活用講座(21)
22 ちょっと話してみませんか?(ピア相談のご案内)
24 読書の薦め

<投稿コーナー>
26 みんなの川柳・俳句・短歌
30 ウッチャンの落書きストーリー

■巻頭言 私のRPと患者会

 私は、来年喜寿を迎える元気なRP二世です。RP先輩の父親は20代で発症、50代半ばで勤めを辞め、「針灸師」の資格を得て自宅でマッサージの仕事をしていました。
 私はというと、1999年の5月に職場の定期健康診断で網膜の異常を指摘され、横浜市大病院でRPと認定されました。その時、看護師さんから「この病気の患者会がある」と教えられ直ちに会員登録をしましたが、後はほったらかし状態。
 当時は視力も視野もなんら自覚症状がなかったし、父親を通じてRPの知識は一通り理解していたので、「とうとう発症したか」程度のゆるいダメージ感覚でした。
 それから7年ほどは、まだ現役であったこともあり、患者会には医療講演会などの大きなイベントだけ一会員として静かにそうっと参加していました。
 会との関わり方が大きく変わったのは、四国八十八ヶ所の霊場巡り、いわゆる「歩きお遍路」を結願したことがきっかけです。2006年、定年退職を契機に思い立ち、45日ほどかけて全てのお寺をお参りしてきました。道中、多くの地元の方から励ましの言葉やお接待というおもてなしをいっぱい受け、般若心経を唱えながら「生かされている」実感を強く感じて帰ってきました。
 思い起こせば、RPだった父に十分な介護も寄り添ってあげることもろくにしなかったという後悔も生まれ、第二の人生は患者会の活動にボランティアとして参加しようと思い立ちました。
 父になし得なかった分を、会員の皆さんの役に立てればと厚かましくも考えたわけです。
 それからはミニ集会にも積極的に参加。2010年には役員の末席に身を置き、最初は監査役、続いて事務局を担当するようになり、RPの進行が極めて穏やかで晴眼状態が続いていることからフットワークの良さを生かした活動に携わりました。
 また、これまでの「“RP”出前セミナー」を「患者のつどい」と改めて担当となり、保健所と共催で交流会として再開しました。
 県内には指定難病登録患者だけでも約1600名が在住しています。だからこそ各地に出かけて、まだ会員でない方やJRPSを知らない方達へも情報を提供し、心の交流を叶える貴重な機会を作りたいと思います。
 いろいろと聞きたい、話を聞いて欲しいという気持ちはどこに行ってもひしひしと感じられます。患者同士ならではの気兼ねない話で共感が生まれ、私は一人ではないと思えるこのような機会を、コロナ禍が終息したらもっともっと広げていきたいものです。

役員  溝田 隆之

■【特別寄稿】JRPS神奈川会報誌100号に寄せて

青木眼科  青木 繁

100号おめでとうございます。
私とJRPSとのかかわりは「網膜色素変性症」が、1996年に厚生省の特定疾患に眼科領域で初めて認定され、申請された書類を神奈川県で私と当時の東海大学の気賀沢一輝先生の2名で審査を行うことになったことからです。
当時、毎月1回神奈川県庁の衛生部で審査を行っていました。そして、どういうわけか、私が審査員を行っていることが分かり、神奈川県内の各保健所から網膜色素変性症についての講演依頼が来るようになりました。
そこで医療側から私が、患者側から中村善晄さんが出席し、中村さんといろいろお話する機会が生まれました。
中村さんは、当時から病気の事、診断のこと、治療のこと、研究のことなど大変詳しくて、一緒に講演をしていて非常にやりにくかったことを覚えています。でも、それだけ知識のある方は中村さんだけで、ほかの患者の方たちはそれほどでもなかったと思います。
その後JRPSとのかかわりが生まれ、ときどき、私が開業してからも、患者さんを紹介して頂きました。
中でも、一番記憶に残っていて、いつも患者さんに手術のことを話すときに話題にしている方がいます。70代後半の女性ですが、網膜色素変性症があり、白内障がかなり進行し、視力は手の動きが分かる程度でした。ほとんど見えていません。
「網膜色素変性症があり」などと書きましたが、白内障が強く眼底の観察も出きません。今までかかられていた先生方は、「手術をすると進行するし、たとえ手術をしても見えるようになりません」と説明していたようです。
私は、これほど見えないのだから手術後、進行してもいいじゃない。手術をやってみませんか?と勧め、病院を紹介しました。紹介先の病院でも「どれだけ見えるようになるか分かりませんよ、変わらないかも知れませんよ」と念を押され、手術にこぎつけました。
結果は、視力は両眼とも1.0まで改善しましたが、視野は両眼とも中心5度程度です。でも、お孫さんの顔も何とか見えるようになったと非常に喜んでいただきました。それから6〜7年経過して今では0.5〜0.6くらい、視野も少し進行しています。手術をしないで見えないままでいるより、たとえ進行が早まったのかもしれませんが、一度でも見える状態を味わっていただけて私は大変良かったと思っております。
この話を読んで、皆さんに大きな期待をさせてしまったら、大変申し訳ございません。みんながみんな良い結果が得られるとは限りません。あまり消極的になるのもいけませんが、一方で、網膜色素変性症が原因で視力が低下しており、白内障が軽い場合もあります。そのような方でも、積極的に白内障の手術を希望される方もおります。非常に難しいし、悩ましいです。
医療側と患者は、信頼関係が何よりで、この病気は難病です。神戸のアイケアセンターで、iPS細胞を利用した手術が行われ始めておりますが、その手術以外には現在、治療法はないと私は思っています。
その治療法も未だ、網膜色素変性症の方に行われておりません。私のところに来られても、治すことはできません。他の眼科に行かれても治すことはできません。それなら今、受診されている先生とじっくりお話し、病気に立ち向かう方が大切です。
JRPS神奈川会報誌を毎号欠かさず、楽しみに読んでおります。いろいろなお知らせ、読書の薦め(時々メモしてAmazonで注文しております)、川柳やウッチャンの落書きストーリーなどなど。情報を仕入れて、担当の先生とお話ししてみて下さい。
私は科学的な根拠はお示し出来ませんが、ストレスなどの悩みはこの病気の進行を早めると思っております。出来るだけ気持ちを大きく、あまり「くよくよ」せず、おおらかに生活されることを期待します(ウッチャンのように自由奔放に生活されていても病気は進行しますけど(笑))。
さらに会報誌が続き、楽しい・正しい情報を提供してくださることを期待します。

■【特別寄稿】会報は会と会員・会員同士をつなぐ架け橋

役員  佐々木 裕二

 私が会報の編集を引き継いだのは、2003年2月の第26号でした。それまでは、現会長の阿部さんが編集を担当されていました。もう18年も前のことです。その会報が100号を迎えるということには、とても感慨深いものがあります。
 JRPS神奈川の会報は年間4回発行されますが、作成に携わっている人にとって3か月はあっという間です。原稿の依頼から編集・校正、そして印刷と発送作業。約2か月間、会報作成業務に関わっていると思います。
 発送作業が終わって一息つくと、もう次の準備、感覚的にはこんな感じです。それでも支部設立以来一度も休むことなく発行されています。担当者はもちろんですが、投稿してくださる会員さんや感想を伝えてくださる方々によって継続できているものと心から感謝申し上げます。
 さて、私には会報に対して特別な想いがありました。それは、JRPSに入会した当初、会報の発送作業に参加してちょっとした驚きと、とても楽しい時間を過ごすことができたからです。それがJRPSの活動に参加していく大きなきっかけとなったと言っても過言ではありません。
 驚いたことは、会報の印刷から組み込み、封筒詰めまでの作業を患者自身で行っていたことです。もちろん、ご家族やボランティアさんもいらっしゃいましたが、ほとんどは目の不自由な患者自身が行っていたのです。目を使う作業、目を使わない作業をそれぞれの見え方に応じて分担してやっていました。障害者の団体と言えば、多くはボランティアさんが行っているものと思っていた私には驚きでした。これは会報発送作業にとどまらず、ほとんどの会の活動がそうだったのです。
 とても楽しかったのは、その作業の時間の周りの人とのおしゃべりです。ミニ集会とはまた違って、同じ人と長い時間話せることや、同じ作業を協力してやっているということで、気持ちがグッと近づくのです。また、組み込み作業や封筒詰めではおしゃべりもさることながら、こっちの方が速いぞ!などと意味のない競争心を燃やしたりしていたものです。
 そしてどんどんできあがり、積み上がっていく会報誌を見て、お役に立てている!と達成感に酔いしれていたのです。
(写真:2003年5月 第27号に掲載した発送作業の様子です。懐かしいお顔が見えると思います。)
  写真1   写真2
 そんな私をJRPSの活動に引き込んでくれた会報の編集を、今度は私に、と声をかけてくれたのです。それまでも盲学校奮戦記などを投稿させてはいただいていましたが、今度はまとめて作り上げる立場になったのでした。
 幸い、盲学校の3年間でパソコンの操作はそこそこできるようになっていたので、技術的なことは何とかなりましたが、問題は文章力でした!担当者がいて書いてくれるものばかりではなかったので、とても訓練されたと思います。医療講演会の報告など、録音を聞きながら必死にまとめたことで、否応なく頭に入ってきたことはありがたいことでもありました。また紙面の編集においても、今でこそ編集・校正チームがありますが、当時はまだまだ個人技に頼っていたような状態でした。
 神奈川の会員数は約350名ですが、交流会や講演会に参加できる人は1〜2割程度です。そうするとそれ以外の8割の人は会報でしかつながっていないとも言えます。情報障害といわれる目に障害を持つ会員さんにとって、貴重な情報源とも言えます。もちろん、メーリングリストやホームページなど様々な媒体もありますが、最も基本となる会報は今後とも会と会員、会員同士をつなぐ大切な存在であることは間違いありません。
 100号を一つの通過点として、更に充実し愛される会報誌に皆様の手で育てていってくださることを心からお願いし、私の思い出話を終わります。

(JRPS神奈川のホームページで過去の会報を読むことができます。)

●佐々木編集長の担当期間
・2003年・26号〜2005年・37号、2008年・46号〜2008年・48号

■JRPS神奈川の活動

<総合カレンダー>

◆6月予定
 6月19日(土)※定期総会・医療講演会
          神奈川歯科大学横浜研修センター
          (オンラインも併用)
          申込制になります。詳細は本文をご覧ください。

◆7月予定
 7月11日(日) ミニ集会 12時〜 711ミーティングルーム

◆8月予定
 8月 8日(日) ミニ集会 12時〜 709ミーティングルーム
 8月29日(日) 会報発送作業

★コロナ情勢により、予定は変更される可能性があります。詳しくは当協会のホームページをご確認いただくか、下記連絡先まで照会願います。

◆ ホームページからは こちらのフォームからご連絡下さい。

※この印の項目は、記事が掲載されています。

●ミニ集会および会報発送作業の会場
 ミニ集会および会報発送作業は、通常かながわ県民センター(TEL:045−312−1121)で開催します。
 横浜駅西口からヨドバシカメラのビルに向かって進み、その手前の横断歩道を渡ったら、右に曲がります。
 100メートル程進んで、高速道路の先の信号のある交差点の左角の建物です。点字ブロックが駅から敷設されています。
※かながわ県民活動サポートセンターは、かながわ県民センター内にあります。

■定期総会・医療講演会のご案内

会長 阿部 直之

 昨年の今頃は新型コロナウイルス感染症拡大という、予想もしなかった事態となってしまい、総会は書面決議で行うことになり、医療講演は中止に追い込まれました。今年もまだコロナは収まる気配がない状況ですが、今はZoomなど、オンライン会議を行うのに便利なツールが出てきており、コロナの影響を受けないようにイベントを行うことが可能となっています。
 JRPS神奈川も昨年度の夏からZoomを活用してイベントを行ってきました。
 今年の定期総会・医療講演会はZoomと会場の両方を用意して開催します。但し、総会につきましては、昨年同様事前に書面決議を行い、当日は簡単な内容説明を含めた決議結果を報告する場とさせていただきます。
 詳細は同封の総会議案書をご参照下さい。
 そして、医療講演会は高橋政代先生にご登場いただきます。神奈川での講演は2012年以来、実に9年ぶりとなりました。
 この機会を逃したら、次はいつ会えるかわかりませんよ!!!
 なお、高橋先生は多忙な身ゆえ、合間を縫ってご講演いただくため、医療講演会を午前に実施し、総会は午後に行います。
 また、会場はかながわ県民センター裏手にある神奈川歯科大学横浜研修センターになります。ご留意ください。

◆開催要綱◆
【日時】令和3年6月19日(土)

●医療講演会 10時〜12時(開場は9時30分)
【講師】株式会社ビジョンケア 高橋 政代 先生
【演題】「網膜再生医療の動向」

【高橋先生略歴】
1986年 京都大学医学部卒業
1986年 京都大学医学部附属病院眼科
1992年 京都大学大学院医学研究科博士課程(視覚病態学)修了
1992年 京都大学医学部附属病院眼科 助手
1995年 アメリカ ソーク研究所 研究員
2001年 京都大学医学部附属病院 探索医療センター開発部 助教授
2006年 理化学研究所 チームリーダー
2012年 理化学研究所 プロジェクトリーダー 
2019年 株式会社ビジョンケア 代表取締役社長
現在に至る

高橋先生の写真があります。

【高橋先生からのメッセージ】
 いつもJRPSでお話しする際は熱心に聞いてくださり、事実をお話しすることができるのでやりがいがあります。
 7年前の1例目の際には危険な細胞とみなされていたiPS細胞を用いた網膜再生医療も、安全性だけではなく効果を判定する第2ステージに入りました。新しい手術治療は通常10年から20年で改良を重ねて良い治療になっていきます。再生医療も手術治療ですので、同様の経過をたどります。その道程の中の中間地点に来たかなと思います。
 治療の対象となる細胞は2種類あります。また、同じ網膜色素変性という病名でもそれぞれの方はさまざまな状態にあり、どのような時期にどのような治療が適しているのかも違います。1種類の治療である病気の治療が全部できるわけではないので、どのように治療を考えていくのか。最近の考えと今後の展望をお話します。

**この医療講演会は「NHK歳末たすけあい」の配分金により開催します**

●定期総会  12時30分〜13時30分
 詳細は同封の議案書をご参照ください

●参加方法 1)会場参加、2)オンライン参加
1)会場参加
【会場】 神奈川歯科大学横浜研修センター7階大会議室
【参加費】 会員無料 非会員500円(ヘルパー等介助者無料)
【定員】 先着60名

2)オンライン参加(会員限定) ※会議システムZoomで行います
【定員】 先着100名
【参加方法】 お申込みいただいたメールアドレス宛に、前日までにZoomのアクセスURLをお知らせいたします。
【事前確認事項】
 Zoom会議システムの利用が初めての方、不安のある方は6月11日(金)までにご相談ください。(JRPS神奈川会員のみ対応します。)

●申込方法(※いずれかの方法にてお願いします)

A)当協会ホームページの「JRPS神奈川お問い合わせフォーム」より、以下の必要事項をご記入の上、送信ください。
【タイトル】 
6月19日参加希望
【本文】 
 1) 会場参加 もしくは 2)オンライン参加
 ・医療講演会・定期総会参加
 ・医療講演会のみ参加
 ・定期総会のみ参加  いずれか

 ※1)会場参加の場合、誘導の要否をお知らせください。
 誘導を希望される方に待ち合わせ場所、時間をお知らせします。

◆ ホームページからは こちらのフォームからご連絡下さい。

●申込締切日:令和3年6月12日(土)

◆注意事項◆
 ・本イベントは、新型コロナウイルス感染症拡大等の関係で変更をする可能性がございます。ホームページ等で最新の情報をご確認ください。
 ・会場は、可能な限り換気を行い、定員の半数を最大参加人数としています。
 ・手洗い、マスク着用の上、入室いただくようお願いいたします。
 ・当日、体調が悪い、微熱がある場合は、ご自身のため、周りの方にご迷惑をおかけしないためにも参加をお見送りください。
 ・参加人数多数の場合、付き添いの方の入室に関して、事前にご相談をさせていただく場合がございます。

■【得々講座】 医療講演会の報告
 必須アミノ酸を用いた網膜色素変性症の新規神経保護治療に向けた取り組み

役員  今村 伸也

 去る3月13日、例年より早く桜の開花宣言を迎えた、穏やかな日に主題が開催されました。今回は、2019年に第23回JRPS研究助成を受賞された、京都大学の長谷川 智子先生をお招きしました。
 なお、今回も新型コロナウイルス感染症による緊急事態宣言下という事で、完全オンラインでの開催となりました。ご参加頂いた会員の皆様有難うございました。

<参加者>
 ●参加者(一般会員) 84名
 ●参加者(役員) 11名
 ●長谷川先生
 ★合計 96名

 今回のご講演は、前半に網膜色素変性症(以下:RPと略す)の現状、後半に分岐鎖アミノ酸を用いたRPの新規神経保護治療に向けた取り組みについてのお話でした。
 前半のRPについては、眼の構造、遺伝の種別等をお話しいただいた後、治療の現状について詳しくご説明頂きました。

<現在の治療法(研究段階のものも含む)>
●薬物治療
 ヘレニエン(アダプチノール)は『暗順応改善薬』として用いられるもので、進行を遅らせる効果が期待されているのではない。ビタミンAは進行抑制の効果は一部報告されているものの、副作用などの課題も指摘されている。
●遺伝子治療
  以下3つの方法が存在する。
 1)原因遺伝子に対する遺伝子治療:RPE65遺伝子に対する治療が、原因遺伝子に対する遺伝子治療の中で最も進んでいる。
 2)オプトジェネティックス:チャネルロドプシンという遺伝子を網膜神経節細胞に導入する方式。
 3)神経保護治療薬と組み合わせた方法:神経栄養因子を導入する手法(九州大学にて治験中)。
●人工網膜  体外の小型カメラでの映像を電気信号に変換し、網膜近辺の電極で捉えて網膜を刺激する手法。ArgusII(網膜上刺激装置)では、350人の実施例がある。
●再生医療
 神戸アイセンターでの取組みを紹介。神経網膜シート移植(2020年)や、iPS細胞を用いた網膜色素上皮細胞懸濁液移植(本年)などの先進事例の報告を頂いた。

 その後、RPと喫煙との関係、支援制度・補助ツールのお話を頂いた後、本題の分岐鎖アミノ酸を用いた神経保護治療についての講演となりました。

<分岐鎖アミノ酸を用いた新規神経保護治療>
 分岐鎖アミノ酸は、長年肝硬変に伴う低アルブミン血症改善に使われてきた実績があり、副作用についても明らかになっているとのことです。これをRPモデルマウスに投与して、効果を測りました。
●Rd10マウス(Pde6b遺伝子が変異)
 分岐鎖アミノ酸の投与によって、視細胞が薄くなることが抑えられていた。又、視細胞の細胞核が多く保たれており、錐体視細胞の変性も抑制されていた。
●Rd12マウス(Rpe65遺伝子が変異)
 病気が進行した状態を考慮し、13か月齢から投与を開始したが、その場合でも、網膜の機能低下を抑制されていた。
●医師主導治験
 マウス実験を元に、2019年3月から2020年12月にかけて、第二相の治験を実施。正式名称は「網膜色素変性に対するTK-98の有効性を検討する二重盲検比較試験」。

対象は以下の通り。
1)RP患者70人(男性32人・女性38人)
2)年齢層は21〜77歳
3)ハンフリーの視野検査(10〜2)で評価が可能な程度の病期の方(MD値が-5〜-25dB)、視力が両眼とも0.01以上、MD値が両眼とも‐30dB以上
4)進行した白内障が無い事や、他の治療薬を服用していないこと
5)京都を中心に広く13都道府県(東京も7人)から参加頂いた

 治験方法として、78週間にわたり分岐鎖アミノ酸、及びプラセボ(偽薬)を3回/日摂取し、視野狭窄進行の度合いを比較検証するというものです。対象者70人のうち、68人が最終検査まで到達されたそうです。発表は以上でした。
 本研究は現在結果の解析中との事ですが、進行を遅らせる効果が表れることを是非期待したいものです。長谷川先生、有難うございました。

 講演後の質疑応答では、非常に闊達な意見交換を頂きました。又、今回もJRPS本部経由で開催告知したことも有り、全国各地からご視聴頂きました。

**この得々講座は「NHK歳末たすけあい」の配分金により開催しました**

■【得々講座開催報告】
 スマートスピーカーと、スマートハウスの快適な生活 〜視覚に頼らない便利な暮らし〜

役員  神田 信

 去る令和3年4月11日(日)、講師の園 順一さんを滋賀のご自宅から、会場と参加者をオンラインで繋ぎ開催いたしました。オンラインでは全国から多数の参加申し込みがあり、お断りするケースも生じました。一方で、会場のかながわ県民センターでは、オンライン併用もあり、密を避け感染対策を講じた開催ができました。

 <参加者>
●会場参加者 15名
●オンライン参加者 74名
★総計 89名

 講師の園氏は、自宅に20台ものスマートスピーカーを持ち、それらを活用して自宅をスマートハウスにされています。
 スマートスピーカーとは、自宅のWi-Fi設備に繋ぎ、声で呼びかけることにより、様々なことができる便利なスピーカーであり、価格は6,000円程度から様々です。
 講演ではそれぞれのメーカーの特徴や、使い方の例として、天気や電車の時刻、ニュース、音楽やラジオ、読書などのデモンストレーションを交えた紹介が行われました。
写真:スクリーンの中継を映す会場の様子

 続いて、スマートハウスの紹介がされました。スマートリモコンやスマートコンセントをスマートスピーカーにリンクさせることにより、照明やエアコンなど電化製品を声だけで操作できるようになるそうです。「スマート」という言葉がよく出てきますがこれは「賢い」という意味です。講演では、人感センサーを交えた照明の使い方や、離れた部屋にある電気毛布の使い方が紹介されました。
 この講演はJRPS神奈川の会員専用ページで録音内容を聞くことができますので、ぜひご活用ください。IDとパスワードがわからない会員の方は、お問い合わせフォームよりお尋ねください。

**この得々講座は「NHK歳末たすけあい」の配分金により開催しました**

■第10回西湘地区交流会開催の報告

小田原市  井手 章

 開催日:令和3年4月18日(日)
 会場:小田原市民交流センター(ウメコ)

◆交流会の内容
【第一部】 
・10時〜12時30分(会議室2)
(1)挨拶、本部・神奈川活動報告、行事予定、トピックス、自己紹介、近況報告等
(2)「講師:佐々木さんによる勉強会」
 患者と家族のハンドブックより、「網膜色素変性症」について
 <目次>
 ●この病気の原因と特徴・症状
 ●原因・特徴・遺伝について
 ●進んでいる治療法開発
 ●合併症など注意すべきこと、今できること 、その他
(3)HOYA株式会社様より4月独立のViXion株式会社様ご挨拶

【第二部】
・13時30分〜15時30分(自由参加)
 ・ディスタンシング小田原城「忍者館」見学会(HOYA株式会社様の「暗所視支援眼鏡」の体験会)
・小田原駅解散

 今回の感想は前日までの雨が上がり、小田原は初夏に近い好天に恵まれました。第一部の「講師:佐々木さんによる勉強会」は、患者と家族のハンドブックの目次の中から、リクエストの項目について解説をして頂きました。最初に(1)遺伝について(2)iPS細胞や遺伝子治療について(3)飲み薬点眼薬についてなど、深堀の説明を聞くことができました。私は55年前の中学3年の教科書「メンデルの遺伝の法則」のエンドウ豆を思い出しながら聞いていました。
 皆さんから次回も残りの項目について勉強会開催の要望があり、最後に皆さんで佐々木さんにお礼の拍手を送りました。
 第一部参加者は総数20名(役員・会員15名、ガイド介助者3名、支援会社2名)、(内訳:男性10名・女性10名)でした。

第二部ディスタンシング小田原城「忍者館」見学会(HOYA株式会社様の「暗所視支援眼鏡」は、二班に別れて4名の方に体験して頂きました。
第二部参加者は総数11名(役員・会員6名、ガイド介助者2名、支援会社3名)、(内訳:男性6名・女性5名)でした。
 なお、解説並びにお世話頂いた
・HOYA株式会社様(ViXion株式会社様)
・一般社団法人 小田原市観光協会様(小田原城)
・NPO法人 小田原市ガイド協会様
 の皆様に感謝申し上げます。
 新型コロナウイルス感染蔓延の中、大変お疲れ様でした。
 誰かが東京へは来ないでください。と言っていましたが、秋の交流会の小田原へは来て下さい。

<追伸トピック>
 昨年の12月17日小田原市の障がい福祉課へ「日常生活用具」としてのHOYA株式会社様の「暗所視支援眼鏡」を認定品にすべく、小田原市在住(JRPS会員)の方中心に陳情書・眼科医の意見書提出を初めとして推進してきました。2月9日「公正文教委員会」の陳情・陳述にて採択、2月17日「3月度市議会定例委員会」にて、神奈川県で初めて採決(採用)して頂きました。ご協力頂いた皆様に感謝申し上げます。

**この交流会は「NHK歳末たすけあい」の配分金により開催しました**

<情報コーナー>

■第三回ロービジョン・ブラインド川柳コンクール
 ご応募ありがとうございました

役員  神田 信

 JRPSにもご協力いただき、私の勤務先主催で行われました「第三回ロービジョン・ブラインド川柳コンクール」。今回も沢山のご応募をありがとうございました。
 2021年3月29日に最優秀賞をはじめ5部門の優秀賞と入選100選をコンクールホームページで発表いたしました。「第三回ロービジョン・ブラインド川柳コンクール」とインターネットで検索していただき、是非ご覧ください。ここでは紙面の都合もあり、JRPS会員の作品をご紹介させていただきます。

 まずは、応募総数2610作品から入選100選に2作品も選ばれました神奈川会員清水 秀雄さんの作品です。(入選作品はコンクールホームページをご覧ください)

◎ 視力検査 レンズ有る無し 変わり無く
解説:矯正が効かなくなるほどRPが進行したのでしょうか?見え方が裸眼・矯正とも同程度でした。家では眼鏡を掛けていませんが、外出時は遮光眼鏡の装着と、目の安全の為に使用しています。

◎ 段差です 気づかう小声 胸響く
解説:「気を付けて」「ありがとうございます」短い会話ですが、何か温かい気持が伝わりました。少しの気づかいが元気を与えてくれます。

 続いて、吉川 弘さんの作品です。

◎ 目とともに 耳や口まで 悪くなり
解説:歳のせいでしょうか。病は徐々に重く、口は軽くです。

◎ そこ見えて ゴミがあったの 見えてない
解説:ゴミを拾ってと言われても分からない、こんな目のこと、理解してもらえる でしょうか。

渡邊 千登世さんの作品です。

◎ 見えないと 当たり散らして 我ひとり
解説:家族には私の愚痴など馬耳東風かもしれない。理解して貰えない分、寂しさが残ります。

◎ 爪を切る 夫の背中に 後光差す
解説:とうとう手足の爪を切るのが見えなくなってきた。夫に話したらぐいっと足を引っ張られ、黙々と爪を切る。その姿に感謝です。

井手 章さんの作品です。

◎ 鏡見て 昔ハンサム 今見えぬ
解説:洗面台に向かい、今は見えぬハンサムと言われた若き頃(自称)を、思い浮かべて髭剃りをしています。今はどんな、じじい顔に…?

◎ 櫻咲く コロナ最多に 負けないで
解説:今はもう、私には桜の花びらが見えません。コロナウイルスに打ち勝って今年又は来年こそは、小田原城のお花見会ができる日が訪れることを祈りましょう。

 以上の皆様は神奈川のロービジョン川柳でもお馴染みの方々。これまでの「ロービジョン・ブラインド川柳コンクールでも入選を果たされています。
 では、今回始めて応募していただきましたペンネームnobia★kawaiiさんの作品です。

◎ 青信号 盲導犬なら わかるでしょ
解説:盲導犬の主な役割は、段差を教える、曲がり角を教える、障害物をよけるです。信号がわかるとメチャメチャ助かるんですが、そうはいかないようです。

◎ わが娘 三役こなす 盲導犬
解説:我が家には子供はいません。盲導犬は私の歩行をサポートしてくれるパートナーですが、恋人のように寄り添って歩き、時には娘のように甘えてきます。うちの夫婦には、子育ての経験までさせてくれる娘です。

ここからは、神奈川以外のJRPS会員の方の作品です。

『華悦』さん
◎ コロナ禍で 同行援護が 使えない
解説:もともとのガイドヘルパー不足に拍車がかかり、ほとんど頼めなくなりました。自分自身も濃厚接触になるので控えたいと思うようにもなりました。

◎ 青信号 音なし人なし わからない
解説:青信号歩道が渡りにくい車社会です。

『シン』さん
◎ コロナ禍で 在宅という名の 引きこもり
解説:急に在宅勤務をしろといわれても、自宅から会社のPCにはアクセスできず。結局、家でじっとしているだけの毎日。

◎ 通勤の 経路を忘れ プチ迷子
解説:慣れているはずの通勤経路。でも在宅勤務から久しぶりに出社したらあたふたしてしまい、ちょっとした迷子に…。

『しげちゃん』さん
◎ マスクして サングラスして 目深にキャップ
解説:遮光眼鏡をかけ、つば付きのキャップをかぶり、最近はマスクも必須。きっと誰だかわからないけど、怪しい人ではありません。

◎ 怒っても 夫婦の絆 肩触れて
解説:日常生活の中でどんなに喧嘩していても、外出の時は肩につかまり、階段とか伝えてくれないけど、それでも何となく伝わってくるのは夫婦だからでしょうか。

『モーリン』さん
◎ こんにちは 小学生から あいさつが
解説:外出時、小学生が白杖歩行の私を見て、最初はヒソヒソ話していた子供達でしたが、何度か遭遇していくうちに、こんにちは、と声をかけてくれるようになり会話が増えていきました。

◎ またしても タッチパネルに 肩落とす
解説:家電が進化して新商品が出ると、タッチパネル操作のものが多くなりました。音声対応してないと、お手上げ状態で、やるせないです。

『純』さん
◎ 人恋し タッチパネルに 困り果て
解説:駅やスーパーなど、音の出ないタッチパネルの操作は、視覚障害者にとっては不便で困りものです。やはり人が一番ですね。

◎ 失明と 年金秤に 掛け悲し
解説:徐々に視力が落ち悲しいことです。社会保険庁年金課で相談すると、年金額が上がりました。なんと、悲し嬉しの複雑な心境です。

『品川 いくさん』さん
◎ ピアカンの 電話の先は 万華鏡
解説:電話相談の用件が済み、他にお困りのことがありますかと尋ねると、様々な人生があって驚かされることがある。

◎ つらいのよ こぼす先あり また生きる
解説:ピアカンの常連さんとは、世間話をしている中で一度でも笑っていただけると、しばらくは大丈夫かなと思う。

『小池 トキ子』さん
◎ アハハハのハ ふたつ人生 まるもうけ
解説:みえる人生とみえない人生を歩むことができるので。この題名で自分史とCDをだしました。

◎ 不自由でも 日々幸せと 感謝です
解説:孫はじめ、まわりの方がいい人ばかりなので助かります。

『小川 正次』さん
◎ いつの日か 絶対見るぞ 孫の顔
解説:医学の発展を信じて、いつかは孫の顔を見てやろう、と心待ちしている。

◎ 暗闇で おれに任せと 胸叩く
解説:ホテルにて全ての照明を落としたところ、晴眼者の友達は何も出来ないと言うので、よしここだとエスコートする。

 最後の紹介は、第一回最優秀賞を受賞された山本 進さんの作品です。
◎ 人差し指の 先から笑う 点字本
解説:面白い本を点字で読んでいる。点字を読む、左手の人差し指の先から笑い出すのである。

◎全盲に なってようやく 肝座る
解説:病気が進行している時は「見えなくなったらどうしよう」と悩んでいたが、失明してしまうと、「もうこれ以上悪くなることはない」と開き直って肝が座ってしまった。

   まだまだ紹介したい作品は尽きません。また、私の知る限りで会員さんを抽出し、その中から私の好みで2作品ずつ選ばせていただきました。見落としやお名前を存じあげていない会員さんには大変申し訳ございませんが、ご容赦ください。
 次回も開催予定ですが、神奈川ロービジョン川柳もお楽しみください。

■サキサキ先生の簡単パソコン活用講座(21)
 〜次々現れる歩行支援システム〜

役員  佐々木 裕二

 スマートフォンを活用した視覚障害者の外出・歩行を支援するシステムが、次々に開発されています。特に警視庁が導入した歩行者用信号の状態をアナウンスする「信GO!(しんごー)」や、東京メトロが導入した「shikAI(しかい)」は大手であり、実用化が始まった点でも影響が大きいと言えます。 
しかし、本当に視覚障害者にとって安全で便利なのか?充分に当事者の意見が反映されているのか?など、私たちはその動向に関心を持って注視していきたいと思います。
 今回は、注目されるシステムについてご紹介します。いずれもスマートフォン使用が前提なので頑張りましょう。

●信GO!(しんごー)
 URL) https://www.signal.co.jp/spdf/9_20200424_pics.pdf

 「信GO!」は、高度化PICS機器が設置された交差点で、交差点の名称や歩行者用信号の情報を、○○方向が青です。などと音声や振動で教えてくれるスマートフォン用のアプリです。宮城県と静岡県で導入が始まっています。

●視覚障がい者向け駅構内ナビゲーションシステム「shikAI(しかい)」
 URL) https://www.tokyometro.jp/news/2021/209156.html

 東京メトロが1月より駅構内の点字ブロックにQRコードを設置し、iPhoneのカメラで読み取ることにより、目的地までの経路を案内するシステムを5駅で実施し、順次拡大すると発表しました。専用のアプリ「shikAI」はAppStoreから無料で入手できます。
  YouTube:https://www.youtube.com/watch?v=XHzWqhNbCaM

●コード化点字ブロック
 URL) https://www.u-presscenter.jp/article/post-45114.html

 金沢工業大学が開発した「Walk&Mobile -コード化点字ブロック認識アプリ」は、点字ブロックに着けられたコードをスマートフォンのカメラで読み取って、視覚障害者への案内を行います。また、地域情報や店舗情報、災害時の避難情報なども提供することで、一般の人の使用も想定しているとのことです。1月からアプリが公開され利用が開始されています。金沢へお出かけの際はぜひご利用ください。

●音声ナビ・アプリ「ナビレコ」
 URL) https://www.amedia.co.jp/product/smartphone/app/navirec/index.html

アメディアが開発したスマートフォンを利用する独自の音声ナビゲーションアプリです。公開されている地図情報を読み上げるのではなく、ユーザーや支援者が独自に経路情報を録音し専用ページ「ナビ広場」に登録することで、利用者全員で共有するというユニークな取り組みです。4月現在約1200の音声ナビ情報が登録されています。自分のよく利用する経路を支援者に録音してもらうことで、一人でもより安全に歩行できるようになる可能性があります。

●ナビレンズ
 URL) https://www.navilens.com/
 URL) https://mirukufu.com/2020/06/05/navilens/

 ナビレンズはQRコードに似たカラーの2次元コードです。スマホに専用アプリを入れてカメラでスキャンします。A4の大きなものは15メートル離れたところからも認識でき、内容だけでなく方向や距離も知らせてくれるそうです。日本ではこれからですが、欧米では拡がりつつあるようです。

●視覚障がい者向け歩行ナビゲーションシステム「あしらせ」
 URL) https://qzss.go.jp/usage/userreport/ashirase_200225.html

 「あしらせ」は、位置情報衛星「みちびき」からの情報を利用して視覚障害者の外出をサポートするツールです。ユニークなのは、インソール型のデバイスを通して振動で足に情報を伝えるところです。これにより聴覚情報を妨げることなく情報伝達できるといいます。来年中旬には発売を予定しているそうです。

スマートフォンを利用することで、専用機を開発するよりもずっと安価にシステムが開発できていると感じます。一方スマートフォンの操作は両手を使わなければならないことが多く、白杖やハーネスを持つ視覚障害者にとって不便なところもあります。歩行中の操作は厳禁なので、そのための工夫も必要でしょう。また、音声でのガイドは細かくなるほど邪魔にもなるということがあります。開発者さんのアイデアと技術力に期待しましょう。

■ちょっと話してみませんか?(ピア相談のご案内)

心理相談員  板嶌 憲次郎

普段からなにかと苦労が多い私たち。そんな中、追い打ちをかけるようにこの新型ウイルス騒動。
みなさんの中には相当まいってしまっている方も多いのではないでしょうか。そんなストレスをため込まずに、モヤモヤを言葉にして吐き出して、少しでも心を軽くしてみませんか。
気持ちを言葉にすることは、思いのほか結構すっきりするものですよ。

●対象
RP患者とその家族
聴き手 プロフィール
板嶌 憲次郎(イタジマ ケンジロウ)
1970年(昭和45年生まれ) 50歳
約30年前(20歳頃)にRPと診断される。
約20年前(30歳頃)障害者枠で転職。金融系の会社にて事務を担当。
現在は盲導犬フレアと一緒にセーリング、ゴルフ、クライミング、ヨガなど楽しんでいます。
●連絡先
◆ ホームページからは こちらのフォームからご連絡下さい。
 ちょっと話してみませんか?相談希望、と書いてご連絡ください。

 また特定非営利活動法人 神奈川県難病団体連絡協議会でも、相談を受け付けています。以下をご覧ください。神奈川難病連「難病カフェ・ピア相談」と電話相談のご紹介です。

●難病カフェ・ピア相談
 県民センター15階、県社協第一相談室をお借りして開催の予定でしたが、新型コロナウイルス感染症拡大の為、現在は対面での開催を控えています。
 そのためオンラインで実施しています。
【日時】 毎週火曜日・第3土曜日 13時〜15時
【申込】 難病連HPの「難病カフェ・ピア相談 オンライン申込」のコーナーから申し込んでください。
 ※前日までにオンライン招待状をお送りします。お気軽にご参加ください。お待ちしております。
 ※対面・オンラインの実施は新型コロナウイルス感染症の状況により、今後変更する場合があります。HPをご覧いただくか、電話でお問い合わせください。

●電話相談
【日時】 月〜金曜日 11時〜16時
【携帯電話】 080−9039−5428 
 (※緊急事態宣言発令中は不在が多いため、こちらの携帯にお願いします)
【電話】 045−651−0258

 ※ご相談の内容・個人情報については「守秘義務」を厳守いたします。

■読書の薦め

横須賀市  内田 知

『どてらい男(どてらい やつ) 第1巻 立志篇』
『どてらい男 第2巻 奮闘篇』
『どてらい男 第3巻 戦乱篇』
『どてらい男 第4巻 激流篇』 
『どてらい男 第5巻 波濤篇』
『どてらい男 第6巻 完結篇』 花登 筐(はなと こばこ) 著
 昭和の時代、西郷輝彦主演で放映された浪速の商人の、ど根性ドラマの原作。
 主人公は周囲の者から、もぅやんと呼ばれるとんでもない型破りの男。物語の背景は関西である。しっかり笑えるシーンも盛りだくさん。昭和の名作ドラマ、見ていた方も多いはず。戦前・戦中・戦後の波乱の時代を生きた、どてらい男の生きざまに、笑って泣いて感動されたし。

『彷徨 さまよう警官』
『特命捜査 彷徨う警官 2』 森 詠(もり えい) 著
 1作目:高校時代に最愛の人を殺害された主人公。未解決のこの事件の犯人を見つけるために刑事となり、所轄を渡り歩いてきた彼は、ついに事件が起きた鎌田署の刑事となった。単独捜査を始めた主人公に、公安警察の圧力がかかる。そして事件の背後に浮かび上がる大きな闇。刑事として法を守るべきか、恋人の無念を晴らすべきか。ラストシーンの展開に期待して読まれたし。
 2作目:鎌田署から警視庁捜査一課に異動した主人公は、特命捜査対策室に配属された。彼の下に、過去に問題を起こした刑事ばかりが集められた。ダメ刑事の烙印を押された者たちが、刑事の底力を見せて、未解決の女子大生殺害事件を追う。
 そして浮かび上がる意外な容疑者の姿。捜査メンバーの中に、二人の女刑事がいる。気の合わないこの二人が、意外なチームワークで事件を解決に導く展開が読みどころ。

『むこう岸』 安田 夏菜(やすだ かな) 著 
 何不自由も無く暮らす中学生の少年。だが彼は、有名進学校の私立中学の授業について行けず、公立校に転校した。
 転校した先で、少年は勝気な少女と知り合う。少女は父を事故で亡くし、母と妹との三人暮らし。家族は生活保護を受けて暮らしていた。
 生活レベルの違いで反目し合う二人。だが、あるきっかけで二人の繋がりが少しだけ強くなる。貧しさゆえに未来が閉ざされる。そんな不条理に、夢を追いかけられない少女。今の生活が当たり前だと思ってきた少年。この二人の素直じゃない友情が、物語の展開を深くしていく。
 2019年、第59回日本児童文学者協会賞受賞作。
 児童文学と侮るなかれ。読み終えた後に来る静かな感動を体験されたし。

『チーム』
『チーム 2』
『チーム 3』 堂場 瞬一(どうば しゅんいち) 著
 1作目:箱根駅伝出場を逃がした大学の中から、予選で好タイムを出した選手が選ばれる混成チーム、学連選抜。敗者の寄せ集めの選抜メンバーたちにチームワークは無い。そんなチームの監督がマスコミ相手に優勝を目指すと発言した。
 監督の言葉に応えて、選抜メンバーたちは一人を残して一つとなる。この一人が、2・3作目の中心人物となる。東京〜箱根間往復217.9km。学連選抜チームの激走と、ランナーたちの心理描写が描かれる後半の描写に、読む手が止まらなくなる。

 2作目:あの激走から数年後。学連選抜チームのメンバーたちは、一人を残して現役を引退していた。残った一人とは、最後までチームに馴染もうとしなかった男だった。だが、彼はマラソンの日本記録を持つ現役のランナーとなっていた。
 そんな男に、ランナーとして致命的な怪我が襲う。そして男は引退を覚悟する。現役として走る最後の大会に向けて、男は孤独なリハビリとトレーニングを開始する。
 そんな男の前に、かつての学連選抜メンバーたちが男をサポートするために集まった。自己中の上に、傲慢な態度で自分たちに関わろうとしなかった男に、彼らはなぜ手を貸そうとするのか。箱根を走った者たちだけが持つ、ランナーとしての友情が胸を打つ。

 3作目:現役を引退したあの傲慢な男に、東京オリンピック前にスランプに陥ったマラソンのメダル候補のコーチ依頼が来る。すべてを自分で決めて、自分の思うように走ってきた男が、自分以外のランナーをコーチすることができるのか。箱根駅伝で伝説を作った男は、日本のマラソンの未来を背負うであろう若きランナーのピンチを救うことはできるのか。読んで確かめられたし。

<お知らせ>
 前号で紹介しました『うちの旦那が甘ちゃんで 4』が、デイジーになっていないと記しましたが、ようやくサピエに登録されました。併せて新作の9作目も登録されました。シリーズを読んで面白さを感じた方はダウンロードしてください。

<投稿コーナー>

■みんなの川柳・俳句・短歌

神奈川MLのみなさん

●川柳
【横浜市】 清水 秀雄
1)はしゃぎ過ぎ ワイドニュースの さくら咲く
解説:いろいろ規制されている中、寝た子の目が覚めてしまいます。しかし桜は開花から散るまで10日程度とのことです。一斉にパッと咲いてパッと散る、その潔さが良いですね。
2)ノンフィクション 呼び覚まされた あの惨事
解説:『前へ!東日本大震災と戦った無名戦士たちの記録』という本を読みました。そうしたら、今より見えていた時にテレビから流れていたニュース画面が蘇りました。
3)藪の中 宣言解除 皆不安
解説:分かったような、分からないような宣言解除。変異型コロナの拡散、ワクチン配布、コロナリバウンド、オリンピック・パラリンピック開催に向けての諸ハードル等に手前勝手ですが心配症になります。
4)早い春 花と筍 香り立つ
解説:花吹雪に筍ごはん。コロナで疲弊している中ですが、少しの贅沢は許されるでしょう。でも黄砂はごめんです。
5)重点措置 思い命名 気も重く
解説:「まん延防止等重点措置」命名を考える人も大変でしょうが、政府も早く国民の気持ちを軽くしてもらいたいものです。

【小田原市】 井手 章
<令和3年初夏 コロナ世相あれこれ>
1)とどめ刺す 厚労省の 飲み会は
解説:本家本元、本丸がとうとうやってしまいました。呆れてコメントできません。
2)マンボウを 天気予報と 勘違い
解説:昔「ヤン坊、マー坊の天気予報」と思いきや、コロナ対策の「蔓延防止等重点措置」の短縮語とのこと、他に漢字九文字なので「戒名」か、とも感じました。
3)三密の 昼カラオケに クラスター
解説:年配者たちのストレス発散の「昼 カラオケ」でコロナウイルスの集団感染が多発しています。「昼から、桶」(棺桶)には入らないよう、お互いに注意しましょう。(ぎなた読み:句読点の付け方で意味が変わります。)「昼、カラオケ」と「昼から、桶」です。
4)第四波 コロナ変異種 拡大化
解説:コロナウイルスの変異種が日本上陸。感染力の強いイギリス型(大阪)N501Yに続き、由来不明型(東京)E484Kも見つかり蔓延の兆しです。注意しましょう。
5)分断か アジアンヘイト アメリカは
解説:トランプ氏の問題発言をきっかけに、ヘイトクライム(憎悪犯罪…人種、民族などの個人や集団に、偏見や暴行の犯罪行為)が表面化しています。

【横浜市】 吉川 弘
1)あのタワー 右目つぶると はい消えた
解説:部屋の窓からランドマークタワーが見えます。外出自粛の中、あのタワーを一瞬で消しましたとか、一人で遊んでいました。
2)また一つ 見えぬスイッチ 増えていく
解説:電子レンジの時間などを設定するパネルスイッチが見えなくなりました。スイッチは、ボタン式がいいですね。
3)都合よく 見えないふりと 妻怒る
解説: 妻は私が、見える、見えないを勝手に使い分けていることがあると思った りする事があるようです。聞こえぬふりならともかく見えないふりは、ないですね。
4)空の皿 つつくのを見て 妻笑う
解説:私の目が不自然に見えなくなって十数年。ずっと近くで見てきた妻でも、よく分かっていないのが現実です。ただ、救われるのは失敗してもあまり怒られなくなったことでしょうか。
5)薬のみ 目薬さして 目の体操
解説:目の治療法に明かりが見えてきましたが、今は目に良いということを続けています。目の体操は自己流。もちろん効果は不明ですけどね。

【相模原市】 武川 宏
1)同病の 若武者二人 箱根走
解説:今年の箱根駅伝は創価大学の嶋津君と永井君がRPという目の難病を抱えながらも見事な走りを見せ、同病の私たちをはじめ多くの人々に感動と勇気を与えてくれました。
2)お花見は 三密を避け 酒も避け
解説:コロナは未だに収まらず、今年のお花見も桜の下での宴会は自粛を求められました。
3)三密を 避けて歩いて ここはどこ
解説:感染リスクを避けるため、いつもと違う人通りの少ない道を選んで歩いているうちに、道に迷ってしまいました。
4)妻出かけ 昼の焼きそば 腕上がる
解説:家内が出かけているときは、お昼はいつも焼きそばを作って食べていますので、段々と腕前もあがってきました。
5)喜寿迎え 体は古く 気は若く
解説:今年で77歳になり体の方は古くなるのは仕方がないですが、気持ちだけは若く前向きに生きたいと思っています。

【小田原市】 佐々木 千代子(患者家族)
1)幸せは あなたが無事に 帰ること

2)ただいまと 帰るその声 待ってたよ
解説:東日本大震災では多くの方が家族を亡くされました。日々無事に帰ってくる事の幸せを大切にしたい。
3)おぶし子が 重き荷物を 軽々と
解説:おんぶしていた息子が、今は母より大きくなり、重い荷物を持ってくれます。
4)鍵がない そこ探したよ アラあった
解説 夫の鍵の探しもの、時折あり。「そこ見たからないよ」と私。よく見たらあった、そこに。どっちもどっち!
5)小包に 添えた一筆 胸あつし
解説:故郷からの小包に添えられた、父の短い手紙に目頭熱くなりました。

【横浜市】 佳純目 譲司
1)高齢者の ライフワークは ノンコロナ
解説:感染したら大変です。要は外出自粛継続、巣ごもりの再徹底かな。出かけないから平気だと、近所のご隠居が言っていました。
2)ワクチン接種 笑って我慢 カメラ前
解説:痛くない。いや、痛いはずだ、ブスリと針を刺すのだから。スガさんやせ我慢。
3)感染と 人出の数が 競う今
解説:第4波が始まっていると言われています。どちらが勝つか?なんだかんだと言っても夜間や休日の人出は増えているようです。自粛に我慢できない人が多いです。
4)マンボーじゃ コロナ笑って 気も緩む
解説:「まん延防止等重点措置」を縮めて“マンボー”ではコロナも笑っちゃいます。政府に緊張感が感じられず、国民も緊張しません。
5)切り札です ワクチン頼み 神頼み
解説:感染増でも病床不足の心配と、マスク・うがいの励行等で施策は何も変わっていません。最後はワクチン頼みと神頼みです。ワクチンの確保も大変ですね。

●俳句
【横浜市】 浅井 進
1)空青し 縞鮮やかな 初鰹
2)鎌倉の 青き大仏 夏の風
3)ゆらゆらと 金魚売り来ぬ 明けの夢

【横浜市】 森田 祐吉
1)梅の香を 満喫し 色もめぐらす
2)マスクとり 桜吹雪と たわむれる
3)温暖化 桜開花が 早まりぬ

●短歌
【横須賀市】 眞田 京子
1)九十五歳 日々の暮らしを 詠む叔母よ 電話で聞きし 短歌(うた)の数々
2)山吹の 細枝(ほそえ)しなやか 満開の 春疾風には 潔く散り
3)大空に 喜びあふるる 桜花 夢に向かって 羽ばたきいかん
4)ご当地の 酒を頂き 休日の 夫と一緒に 盃交わす

■ウッチャンの落書きストーリー
 笑ってこらえろ!ヤマーダ奮闘記!

右配置

横須賀市  内田 知

 真面目過ぎる人を、生真面目と表現することがある。この生真面目に冠をのせたような人がいる。この物語の主人公であるヤマーダこと山田さんである。
 ちょっとしたきっかけでヤマーダは、ウッチャンという視覚障害者と出会った。このウッチャン、空気が読めないのではなく、空気を読まない。読まないだけではなく、その場の空気を自分の物にしようとする。だが、しようとすればするだけ失敗する。つまらないオヤジギャグにブラックジョークを連発。物事を斜めから見る、まっすぐみようとしない
、 ひねくれた性格なのだ。そんな人間に生真面目の上に王冠を載せたような性格のヤマーダが関わってしまった。ヤマーダにとって困惑の体験をするのは必然となる。この必然とも言うべき体験を綴ったのがこの物語である。
 チャリティーライブの準備を始めた頃、ヤマーダの存在を知っているのは役員だけで、一般会員でその存在を知る方はいなかった。チャリティーライブの広報を目的として、ウッチャンとヤマーダはつくしの会に参加した。参加した催しは、そば打ち体験。小田急線のなんとかという駅に集合、体験場所へはそこからバスで移動というコース。バスの中は路線バスにも関わらず、乗っているのは神奈川の会員だけ。もう貸し切りバス状態。駅からちょっと離れると、車窓からの風景は田んぼと畑ばかり。神奈川の会員は視覚障害者である。にもかかわらず、車窓からの風景に見いって「今は何を植えるのかなあ」「あっ、牛がいる羊がいる」と、はしゃぐおばちゃん会員たちだった。なんたって、貸し切りバス状態だから「ウルサイ」と言う乗客はいない。バス停に止まる事もなく走るバス。 そんなバスの中、車窓から見える風景を、参加者たちと眺めながらもヤマーダは冷静だった。通り過ぎるバス停を数えていたらしく、下車するバス停が近くなってきたことを参加者たちに伝えたのである。ヤマーダの真面目さを体験しているウッチャンは、さすがヤマーダと思った。ついでに、俺と二人だけで動いている時は、なんで乗る電車を間違えたり、降りる駅を乗り過ごしたりするのかなあとも思った。生真面目に王冠を載せてはいても、天然ボケの衣服をまとっているようなヤマーダ。ウッチャンにとってそんなヤマーダは、最適なボケとツッコミ相手になる。ウッチャンに、そんな風に思われていると感じる事もないヤマーダは、「もう少しで下車するバス停ですから、お手帳のご用意をお願いします」とウッチャンに言った。
 ヤマーダの一言に、首をかしげ「エッ?」と尋ね返した。「お手帳のご用意を…」と言葉を繰り返すヤマーダ。ウッチャンの頭の中で(おてちょう?)の言葉がぐるぐる回る。そして、ハタと気がついたウッチャンは、吊革に掴まって自分の前に立っているヤマーダに言った。
 「手を出して」
 その言葉に今度はヤマーダが首を傾げて「なんですか」
 「いいから手を出せ」
 恐る恐る手のひらを上にしてウッチャンの前に出す。
 「俺の手の下にあんたの手を持ってこい」
 言われたようにするヤマーダ。
 「持ってきたか」のウッチャンの言葉に「はい」と答える。その声を聞いたウッチャンは、自分の手をヤマーダの手に載せて「ワン」と吠えた。
 何が起きたのか考えられずヤマーダは、ウッチャンの手を載せられたまま数秒固まってしまった。固まったヤマーダの耳に、また「ワン」の声。その声に我が身に起きているヘンな状態にようやく気がついて、「何やってんですか」と口調を荒げる。それに平気な顔をして「あんたが、お手って言うから…」と言葉を続けようとするウッチャンを制して 「私が言ったのはお手帳です。オ・テ・チ・ョ・ウですよ」
 「だから、お手をしたんだよ」
 うんざりしながらヤマーダは言う。
 「内田さんにお手をなんでさせなきゃいけないんですか」
 「そんなの俺にもわかんないよ。言われたからやったまでだよ」
 「お手帳です。バスを降りる時に運転手さんに見せるお手帳です」その言葉に
 「おてちょうとはなんだ」と聞き返したウッチャンを見て、しばし考えたヤマーダは
 「お手帳、障害者手帳の事です」と言った。その言葉に、胸のポケットから障害者手帳を見せて「これか」と聞くウッチャン。
 「わかっているならふざけないで早く出してください」
 「ふざけてなんかいない。おてちょうなんて言うからとりあえず、ワンチャンのお手をしただけだ。だいたいこんな時に、なぜお手をしないといけないのかわからなかったのはこっちだ。障害者手帳って普通に言えばいいじゃんか。なんでもかんでも、言葉の前に『お』をつけて丁寧語にするんじゃない」
 それを聞いていたヤマーダは、何かに気がついて言った。
 「お手帳と聞こえていたんですよね。なのに、お手の所だけ強調してまたふざけましたね」
 「いやいや、難聴なんで聞き取れなかったんだ。そんなことよりおてちょうはやめろ。障害者手帳って言うように直せ」
 「お手帳は、お手帳です。別に丁寧語ではありません。お手帳とおっしゃる方はいます」
 この言葉に、頑固だなこいつと思いながら、なんとツッコんでやろうかと考えようとした時、下車するバス停に到着。ウッチャンとヤマーダは、会話を中断してあわてて降車口に向かいバスを降りた。降りたバス停でも二人は意味のないお手帳議論をした。そんな二人に「そこの二人、何を言い合ってるの。いつまでもそこにいると置いてっちゃうよ」の声。その声に「スイマセーン」と参加者たちの後を追う二人だった。
 こんな事があってから数か月後、ウッチャンとヤマーダは横須賀市役所の福祉課にいた。あれこれ質問するウッチャンに対応する市職員。そして市職員は言った。
 「内田さん、お手帳を見せていただけますか」
 この言葉に、隣に座っているヤマーダの気配が変わったのを感じたウッチャンだった。案の定、市役所を出た時、ヤマーダはウッチャンに向かって言った。
 「お手帳と言う人はいましたね」
 「そうだね」と答えるしかないウッチャン。ヤマーダのどこか勝ち誇ったような姿が見えたようで、ウッチャンは心の中で悔しがった。なんで悔しがる必要があるのか理解できないが…。
 『笑ってこらえろ!ヤマーダ奮闘記!』はシリーズとして投稿する事になりました。シリーズ2作目をお楽しみに!

■光学堂 ロービジョンルーム

視覚障害者用福祉機器 / メガネ・特殊メガネ 取扱店
目がご不自由な弱視の方へ
視覚に障害のある方や、見えにくくてお困りの方におすすめしたい商品を多数取り揃えております。
一般的にあまり出会う事のない商品を多数展示・販売をしております。
是非、ご相談や情報収集にご来店お待ちしております。

遮光眼鏡(医療用フィルターレンズ)
眩しくて見えにくい方に光の波長をコントロール!
無料で2週間貸出し個別に対応しますご相談実施中
高倍率ルーペ(拡大鏡)
常時、店頭に450種類ご用意 実際に見比べてください。
音声式・触読式時計
時刻を音声でお知らせする音声式腕時計や置時計
指で直接針を触わる事の出来る触読式腕時計
拡大読書器 据置型や携帯型など最新型拡大読書器を店内25台用意
実物のデモ機をご用意!自分の眼に合った見え方、映り方をする使いやすい機種や用途で比べて探して下さい。
プレクストーク(視覚障害者用ポータブルレコーダ)
音声図書館で借りたデイジー図書などの再生や音楽CDを聴く、メモ録!最近はポケットサイズの 小型も大人気
タッチボイス(ICタグレコーダ)
触ってわかりにくい物にタグに音声でメモ録!
テルミ..(活字読み上げ装置)
SPコード付の手紙や案内を音声で読み上げます!
電子ルーペ
持ち運べる拡大機能がある簡易機で大変便利です。
音声体重計・音声血圧計
音声で誘導して体重などをお知らせ。
音声機器はいろいろ便利にございます。
単眼鏡 弱視眼鏡 など

光学堂ロービジョンルーム
〒220−0051 横浜市西区中央2丁目6−5 めがねの光学堂内
毎週水曜日定休日 営業時間:am10:00〜pm7:00
完全予約制:ご来店の際は必ずお電話でご予約して下さい。
045−290−0048
詳しくは、http://www.kougakudo.jp/ 検索 光学堂 横浜市

■アイネットワークからのお知らせ。

『自分の家で体験していただけます』
各モデルを体験していただく、2021年からの、新しい方法です。
各モデルを、貸出して体験していただくという方法を基本にします。
集まる場所へ行かなくても体験できるようにと、この方法にしました。
貸出の費用は送料、返送料を含め、すべて無料です。

アイネットワークでは、交流会などに参加し、見えにくい、見えないという方々の、ご意見、ご要望をお聞きし、他社に無いもので、新しいモデルを開発し、用具を選ぶとき選択の幅が拡がることを目指しています。
日常生活用具の、「活字文書読上げ装置」という項目で給付をうけられるモデル、アイビジョンスピーチオがあります。
SPコードの解読が出来るだけでなく、新聞や本などの活字文書も簡単操作で読み上げ出来るものです。拡大読書器とは別の給付項目なので、手帳1級、2級の方は、拡大読書器の給付を受けておられる方も、給付申請できるものです。
給付限度額内の99,800円で、超過負担はありません。所得の有る方は原則1割負担で9,980円の負担です。非課税の方は無料で給付を受けられます。

日常生活用具の、「拡大読書器」の項目で給付を受けられるモデルが有ります。
アイビジョンデジタルノート型。最新の高性能本体にカスタマイズして納入しています。
アイビジョンデジタル見る・聞く・テレビ画面型。32型しゃべるテレビを無償付加します。
アイビジョンデジタル見る・書く・テレビ画面型。32型しゃべるテレビを無償付加します。
32型しゃべるテレビは在庫限りになります。在庫切れ後は別のメーカー製になります。
アイビジョンデジタル書見台型。上下左右に動く台にカメラ付き10型液晶モニタ搭載。
アイビジョンデジタル通帳読み上げ。この他、カメラ付き10型液晶の新モデルを開発中。
これらは給付限度額内の198,000円です。所得のある方は19,800円の負担で、非課税の方は無料で給付を受けられます。
カタログ、読上げ機能付きのモデルには紹介のCDも有ります。資料送付、貸出依頼の相談など、下記へお願いいたします。

読書器と活字文書読上げ装置で読める世界を拓く、アイネットワーク有限会社。
電話&FAX 042-583-7450
携帯電話 080-8034-1163 担当は みやたけ です。
メール aivision@js7.so-net.ne.jp
〒191-0055 東京都日野市西平山5−23−12

商標に関して、スピーチオ、SPコードは株式会社廣済堂の登録商標です。
しゃべるテレビは三菱電機の商品名です。
アイビジョンはアイネットワーク有限会社の登録商標です。

(裏表紙)

◆神奈川県網膜色素変性症協会(JRPS神奈川)が発行する会報誌が、創刊号の発行から足掛け25年の歳月をかけ、今年の8月に節目となる100号を発行します。そこで、記念特集号として99号、100号、101号の3回に渡り、『100号記念特集』を組みます。
今号は記念特集の第一弾となっており、記事の内容としましては、当協会の設立時から様々な形でご支援を頂いている眼科医の先生方や会報誌の音読ボランティアをしていただいている団体、そして歴代の編集長の皆様から、当協会との関わりや想いを寄せていただくことにしています。
今号では皆様おなじみの相模原市の青木眼科医院長と、佐々木 裕二元編集長の記事を特別寄稿として掲載しています。特別寄稿を拝読し、改めて会報誌への期待と役割を強く感じました。皆様も是非ご一読ください。(佐藤)

◆JRPS神奈川会報は下記の3形式でお届けしています。
 変更を希望されるかたは、下記連絡先までご連絡下さい。
 1)墨字版:印刷物、大きめのゴシック体の文字
 2)デイジー版:デイジー形式の録音CD
 3)メール版:テキストメール

◆神奈川県網膜色素変性症協会(JRPS神奈川)連絡先

・事務局  溝田 隆之
     〒237−0067 横須賀市鷹取***
     TEL・FAX:046-****
・会長   阿部 直之   
     〒213−0011 川崎市高津区久本***
     TEL:080−****(携帯18時以降)
     E-mail:naoyuki.ave******
・編集  JRPS神奈川編集部
        E-mail:kanagawa******

発行人 特定非営利活動法人障害者団体定期刊行物協会
〒157-0072東京都世田谷区祖師谷3-1-17
          ヴェルドゥーラ祖師谷102号室

http://www.rp-k.com
定価 200円
(おわり)