●会報 第96号

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JRPS神奈川会報第96号

(表紙)
1971年 8月 7日 第三種郵便物認可(毎月6回 1の日・6の日発行)
2020年8月6日発行 SSKA 通巻 第10311号
SSKA
KANAGAWA 2020 Autumn

相模原市在住 武川宏さんの版画『城山ダム』より

私たち自身で
治療法の確立と
生活の質の向上を目指す

**この会報誌は「NHK歳末たすけあい」の配分金により作成しています。 **
JRPS神奈川

(表紙終わり)


第96号 目次

<巻頭言>
  2 コロナ禍を逆手にQOLの向上を

<JRPS神奈川の活動>
  3 総合カレンダー
【開催予定】
  4 得々講座『社会モデルの考え方を知っておこう!』
  6 医療講演会『遺伝子検査のメリットとデメリット』
  7 第9回西湘地区交流会開催のお知らせ
【ご報告】
  9 JRPS神奈川 第25回定期総会の報告
 10 新役員のご紹介
 10 初の「オンラインミニ集会」開催の報告

<情報コーナー>
 11 JRPSカレンダー販売のご案内
 12 視覚障害者の駅ホームからの転落事故をなくすために
 14 災害から命を守る
 18 サキサキ先生の簡単パソコン活用講座(18)
 21 ちょっと話してみませんか?(ピア相談のご案内)
 23 読書の薦め

<投稿コーナー>
 26 みんなの川柳・俳句・短歌
 29 ウッチャンの落書きストーリー

■巻頭言
 コロナ禍を逆手にQOLの向上を

3日坊主だったラジオ体操、できるわけないと思っていた自炊、面倒くさかった母への電話……
いずれも新型コロナウイルス感染拡大防止のための自粛生活をきっかけに始めたもので、私の毎日の生活に張りと潤い?を与えてくれています。
新型コロナの影響であれもできない、これもできないと嘆いてはいませんか。
確かにコロナ禍で社会状況が一変し、私たち視覚障害者を取り巻く環境は厳しくなっています。外出がしにくくなり、スーパーでの買い物も不自由、公的施設の利用は制限され、駅での声掛けが減ったという話も聞きます。
仕事を失った人もいます。でもやれることはあるはず。むしろ普段できなかった・しなかったことに取り組むチャンスかもしれません。
できない理由より、やれることを考える……私が尊敬する経営コンサルタントの小宮一慶さんはこう話しています。
そうすることが、これからの新規ビジネスやサービスの開発、新規顧客の開拓などにつながるというのです。旅行・宿泊、飲食などの会社が大きく売り上げを減少させ、他の産業でも大打撃を受けている企業が多い中で、経営者に向けた発言ですが、私を含め一般の人にも通じるメッセージだと受け止めています。
新年度に入り、私たちJRPS神奈川も新しい役員を迎え、新体制をスタートさせました。これまでイベントの多くを中止せざるをえない状況でしたが、7月にウェブ会議サービス「Zoom(ズーム)」を使ってオンラインミニ集会をテスト開催。秋以降にはリアルセミナーとZoomを組み合わせた得々講座や医療講演会なども計画しています。
 パソコンが苦手で………という方にはZoomの導入をサポートするなど、担当役員も勉強しながら頑張っています。
サポートを受けた会員の中にはお孫さんやヘルパーさんの手を借りながら挑戦している人も。パソコンを通じて会員同士が交流するなんて、コロナがなければ、たぶんやらなかったことかもしれませんね。
ワクチンができるまではまだ時間がかりそうで、当分は「ウィズコロナ」の期間が続くことは間違いありません。
であるならば、逆にこの状況をQOL(生活の質)向上のきっかけとしたいところです。

(役員 田中 和之)


■JRPS神奈川の活動  

<総合カレンダー>

◆10月予定
 10月 4日(日)※得々講座「社会モデルの考え方を知っておこう!」
           かながわ県民センター 301号室
           開場12時30分 開演13時
 10月11日(日) オンライン(Zoom)ミニ集会 13時〜

◆11月予定
 11月 1日(日)※第9回西湘地区交流会
           おだわら市民交流センターUMECO(ウメコ)
           1階 10時〜12時30分
 11月 8日(日) オンライン(Zoom)ミニ集会 13時〜
 11月22日(日) 会報発送作業

◆12月予定
 12月13日(日)※医療講演会「遺伝子検査のメリットとデメリット」
           神奈川歯科大学附属横浜研修センター
           7F大会議室 13時〜
           講師 浜松医科大学 堀田喜裕先生

★新型コロナウイルス感染症拡大等の関係により、予定は変更される可能性があります
。詳しくは当協会のホームページをご確認いただくか、下記連絡先まで照会願います。  <連絡先>
  阿部 **********
  溝田 **********

※この印の項目は、記事が掲載されています。

●ミニ集会および会報発送作業の会場
 ミニ集会および会報発送作業は、通常かながわ県民センター
 (TEL:045−312−1121)で開催します。 
 横浜駅西口からヨドバシカメラのビルに向かって進み、その手前の横断歩道を渡ったら、右に曲がります。
 100m程進んで、高速道路の先の信号のある交差点の左角の建物です。点字ブロックが駅から敷設されています。
 ※かながわ県民活動サポートセンターは、かながわ県民センター内にあります。

■得々講座
「社会モデルの考え方を知っておこう!」

役員  神田 信

「からだの障害」と「社会の障害」
目が見えない・見えにくいから困るの??
社会のあり方で見えない・見えにくい人も困らなくなる

◆日時:10月4日(日)13時〜15時 開場:12時30分 終了時刻は予定です。
◆講師:小泉 暁美(こいずみ あけみ)氏
・NPO法人神奈川県視覚障害者情報雇用福祉ネットワーク理事長(通称:View-Net神奈川)
・社会モデルの視覚障害理解を進めるため、横浜市を中心に小・中学校等で福祉教育を精力的に行っているJRPS患者会員。

◆講演内容
障害の社会モデルとは、車椅子ユーザーを例にすれば、スロープがなく階段しかない建物が障害を作っているという考え方です。
すなわち、
障害を持つ個人に問題があるのではなく、すべての人を受け入れる体制にない社会に問題があるという考え方です。
昨今、視覚障害者を取り巻く環境も良くなってきています。その一方で、設備や新しい技術ですべての障害をカバーできるという単純なものではないのも事実です。
本講座では、社会と障害者自身の関わり方や、障害の捉え方を考え直し、障害を抱えて生きていく上での考え方のヒントを探っていきます。

◆参加方法:従来型の会場にお越しいただく方法とオンライン参加のふたつの方法があります。

●会場:かながわ県民センター 301号室
・参加費:会員無料 非会員500円(ヘルパー等介助者無料)
・参加総数を先着45名とします。下記の申込先へなるべくメールで、お名前、参加人数、会員・非会員の種別をお知らせください。
【申込先】
 連絡フォーム こちらのフォームに講演会参加希望と書いてお申し込み下さい。
※一日たっても確認の返信がない場合は、恐れ入りますが再度ご連絡をお願いします。

●オンライン:会員限定
・会議システムZoomで行います。
本誌18ページ「サキサキ先生の簡単パソコン活用講座」で取り上げています。パソコンだけでなく、スマホ等タブレットや、通話料がかかりますが電話での参加も可能です。
・参加費:無料。通信費がかかる場合があります。
・参加方法:前日までにホームページの会員専用ページにアクセスURLをお知らせいたします。
・会員専用ページには、毎年変わるIDとパスワードが必要になります。
今年のIDとパスワードは、先般お届けした総会議案書に記載してあります。事前にご確認ください。紛失等により、不明な方は、事前にお問い合わせください。
・Zoom会議システムの利用が初めての方、不安のある方は上記記載の申込先まで電話番号を添えて9月18日金曜日までにご相談ください。

◆注意事項
・本講座は、新型コロナウイルス感染症拡大等の関係で変更をする可能性があります。ホームページ等で最新の情報をご確認ください。
・会場は、可能な限り換気を行い、定員の半数を最大参加人数としています。
・手洗い、マスク着用の上、入室をお願い致します。
・当日、体調が悪い、微熱がある場合は、ご自身の為、周りの人のために参加を見送ってください。
・参加人数多数の場合、付き添いの方の入室に関して、事前にご相談をさせていただく場合があります。

★オンライン参加に関して、当日のヘルプ対応は基本的にできません。不安のある方は、必ず9月18日金曜日までに ご相談ください。

**この得々講座は「NHK歳末たすけあい」の配分金により開催します。**

■医療講演会
 「遺伝子検査のメリットとデメリット」

                    会長  阿部 直之

この会報が届くころは厳しい残暑とコロナの不安がさらに増大して、何かスカッとしたいなという気分でいっぱいのことと思います。
そのモヤモヤした気分を一掃するような爽快な企画をと思い、少し先になりますが久しぶりの医療講演会です。昨年の第14回網脈絡膜変性フォーラムで講演された浜松医科大学の堀田喜裕先生をお招きします。
その講演を聞いた役員からも、わかりやすく親しみのある語り口が好評でした。ご期待ください!

・開催日:令和2年12月13日(日)
・会場:神奈川歯科大学附属横浜研修センター7F大会議室
・開場:12時30分  開会:13時00分
・講師:浜松医科大学 堀田 喜裕(ほった よしひろ) 先生 
・演題:遺伝子検査のメリットとデメリット

※新型コロナウイルス感染状況も踏まえ、申込方法等詳細は、11月中旬に当協会ホームページおよび、メーリングリスト、並びに次号会報(11月22日発行予定)にてご案内いたします。

【堀田先生の略歴】

1983年 順天堂大学医学部卒
1984年 順天堂大学医学部眼科助手
1986年 米国国立保健研究所に留学
1989年 順天堂大学医学部眼科助手
1991年 東京自動車連合健康保険組合
      柳橋病院眼科医長
1996年 順天堂大学医学部眼科講師
1999年 名古屋大学医学部眼科講師
2000年 浜松医科大学医学部眼科教授
2008年 公益財団法人静岡県アイバンク理事長を兼務(2019年6月まで)
2016年 浜松医科大学保健管理センター長を兼務(2020年3月まで)
2020年 浜松医科大学医学部附属病院副院長を兼務
      現在に至る

【堀田先生からのメッセージ】
遺伝情報を医学に応用しようと、膨大な研究が進行しています。網膜色素変性を代表とする網脈絡膜変性疾患についても例外ではありません。
皆さんのなかにも主治医から、遺伝子検査について話を聞いたり、実際に遺伝子検査を受けたりしている方がいらっしゃるかもしれません。2000年にヒトのゲノムの全塩基配列の決定が報道されてからまだ20年ですが、我々の遺伝子を網羅的に検査できる技術の進歩には驚くばかりです。
ヒトの遺伝子は約25,000個と言われています。網脈絡膜変性疾患の場合、疾患の原因遺伝子はひとつのことが多いので、疾患によって検出率は異なりますが、遺伝子検査によって3〜4割の患者さんの原因を明らかにすることができます。遺伝子検査の結果は究極の個人情報ですから、検査をするに当たっては担当医から十分な説明を受けて、書面での同意を得ることが必須となっています。
しかし、いくら丁寧に説明されても、遺伝というわかりにくい分野なので、十分に理解するのは難しいのではないでしょうか。本講演では、遺伝子検査のメリットとデメリットについてわかりやすく解説してみたいと思います。

**この医療講演会は「NHK歳末たすけあい」の配分金により開催します。**

■第9回西湘地区交流会開催のお知らせ

小田原市  井手 章

新型コロナウイルス感染症拡大の影響による、3月の開催中止から半年以上が経過しました。今回は開催されることを祈りましょう。
なお、協会の指導により、お楽しみの「昼食・ミーティング」の時間はありません。昼食は、交流会終了後に、各自おとり下さい。
また、今回は、HOYA(株)製の「暗所視支援眼鏡」の体験会を開催いたしますのでご参加をお待ちいたします。

★会場のコロナ対策の都合で、参加者を先着20名までとさせていただきます。

・開催日:令和2年11月1日(日)
・会場:おだわら市民交流センターUMECO(ウメコ)1階
・住所:小田原市栄町1丁目1番27号
   (小田原駅東口を右折100m先)
・電話:0465−24−6611
・URL:http://umeco.info/
・集合場所:JR小田原駅東口の改札口前に9時40分にご集合ください。
 (お世話役:田上、井手がお待ちいたします。)
※直接、会場へ行かれる方は、9時50分までに入場してください。

◆交流会の内容
●10時00分〜12時30分(会議室7)
・挨拶、自己紹介、近況報告など
・医療関連、活動内容報告、行事予定、トピックスなど
●(11時20分〜12時30分)
・HOYA(株)様の「暗所視支援眼鏡」の体験会
●12時30分 解散

◆事務局からのお願い
・当日はマスク着用をお願いします。また、発熱・体調不良の方は参加をご遠慮ください。
・会場には消毒用アルコールを準備していますが、ご自分用の携帯アルコールをお持ちの方はご持参ください。

◆連絡・申込先
  こちらのフォームから西湘地区交流会参加希望と書いてご連絡下さい。

**この交流会は「NHK歳末たすけあい」の配分金により開催します。**

■JRPS神奈川・第25回定期総会の報告

会長  阿部 直之

今年は新型コロナウイルス感染の影響により、会場(かながわ県民センター)での実施は困難であったため、事前に会員の皆様に議決行使書・委任状を送付し、回答いただいた分について議案毎に承認か否かを集計しました。
総会は6月28日にオンラインにて実施し、昨年同様、議長に板嶌憲次郎さん、副議長に光法学さん、議事録署名人に吉田明美さんになっていただき、以下の通り全ての議案が可決承認されました。

◆議決行使書回答数106名
・委任状回答数39名
・合計145名
・過半数73

第一号議案
・2019年度事業報告 賛成144、反対1
第二号議案
・2019年度収支決算報告 監査報告 賛成144、反対1
第三号議案
・2020年度役員の選出(案) 賛成143、反対1、棄権1
第四号議案
・2020年度事業計画(案) 賛成144、反対1
第五号議案
・2020年度収支予算(案) 賛成144、反対1

新型コロナウイルス感染が続く状況ですが、会員の皆様の安全に配慮しつつ、当協会の活動がスムーズに行われますよう、JRPSのスローガンを胸に邁進する所存です。引き続き、よろしくお願い申し上げます。


■新役員のご紹介

JRPS神奈川の皆様こんにちは。横浜市戸塚区の前田真介(まえだ しんすけ)です。
令和2年6月28日(日)に開催されました第25回定期総会にて新役員(会計監査)に選出いただきました。深く感謝申し上げます。会員の皆様、JRPS神奈川のために微力ながら尽力させていただく所存でございますので何卒よろしくお願い申し上げます。
簡単に自己紹介をさせていただきますと、私は2017年に網膜色素変性症の診断を受け、現在手帳は2級、中心暗転です。2018年年末にJRPS神奈川に入会させていただき、これまでミニ集会はじめ様々なイベントに参加させて頂いたり、会報発送など色々とお手伝いをさせていただいて参りました。
本年3月からは通勤時や夜に白杖も使うようになりました。そのような中での皆様との出会いが私の支えとなり励みとなって、前へ進んでいくことができたことを実感しております。
至らぬ点も多々あると存じますが、ご指導ご鞭撻を賜ることができましたら幸いです。
今後ともよろしくお願い致します。

■初の「オンラインミニ集会」開催の報告

役員  萩原 徹

7月12日(日)、Web会議サービスのZoom(ズーム)を使用し、当協会で初めて「オンラインでのミニ集会」を開催しました。
開催時間は15時から17時の2時間で、申込み者16名、当日参加者は14名、参加者の年代は30歳代から70歳代までと、幅広くご参加いだだきました。また、入会間もない新しい会員の方の参加や、初めてZoomを使う方もいましたが、特に問題なくスムーズに開催できました。
Zoomを初めて利用する方々には、事前にZoomにログインするトライアルも行いましたが、皆さん、ご家族やヘルパーさんなどのサポートにより、事前準備を万全に行っていただきました。
話題は、各自の自己紹介の後、コロナ禍での仕事や日常生活の状況、ベテラン会員による新会員の方への情報提供、iPhoneや川柳募集の話など、多岐にわたり、自宅にいながら会員同士話せる、新しい形のミニ集会となりました。
オンラインミニ集会終了後、参加いただいた方々の一部から、いろいろなご意見をいただきました。まずは、「前回ミニ集会の2月以降、久しぶりにみなさんのお声が聞けて元気が出た」、「ウィズコロナの現状では、オンラインでの情報交換は仕方ないが、いずれいつものかながわ県民センターで皆さんとお会いしたい」などの感想をいただきました。
また、運営については、「お互い不慣れな中の開催だが、始まるときなどダラダラした感じがした」、「もう少し効率的に発言をしてもらったほうがいい」など、効率的な会議運営を求める声もあったことから、次回以降の開催に役立てたいと思います。
新型コロナウイルスの感染は、まだまだ拡大が進んでいます。ミニ集会以外のイベントにおいても、オンラインやオンラインとリアル開催のハイブリット開催など検討を進めていきます。
次回のオンラインミニ集会は10月に開催を予定しています。
Zoomの利用方法は、本会報誌18ページ掲載の「サキサキ先生の簡単パソコン活用講座 ●初めてのZoom」を参考に、チャレンジしてみませんか?
また、担当者も皆さんの参加のお手伝いをしますので、積極的な参加をお願いします。

<情報コーナー>

■JRPSカレンダー販売のご案内
〜締め切りは、9月27日です〜

役員 伊藤 つえみ

今年もJRPSオリジナルのユニバーサルカレンダーが発売されます。黒地に白文字のとても見やすい大判のカレンダーです。メモ欄も付いています。
購入ご希望の方は忘れずにお申し込みください。毎年年末になってご連絡をいただく方がいらっしゃいますが、本部にも在庫がなくご購入いただけないということもありました。ご注意ください。

●JRPSオリジナルカレンダー
黒地に太いユニバーサルフォントで表示されているカレンダーの写真です。"テキスト"
 サイズ:約縦55cm×横38cm、12枚
 価格:1部=1,000円 (郵送の場合は1,610円)

●申込締め切り:令和2年9月27日(日)
●申込先
  こちらのフォームからカレンダー希望と書いてご連絡下さい。
※申込締め切り日を過ぎてのお申込みは、本部発送となり、振込手数料がかかります。
※コロナ感染拡大状況によっては、すべて郵送となる場合があります事、ご承知おきください。

■視覚障害者の駅ホームからの転落事故をなくすために
 〜日本歩行訓練士会のホームページより〜

役員  神田 信

2019年10月1日京成立石駅、10月2日JR新宿駅、2020年1月6日JR石岡駅、1月11日JR日暮里駅、7月26日JR阿佐ヶ谷駅と、視覚障害者の駅ホームからの転落事故が続いて起きました。亡くなられた方に心より哀悼の意を表します。
日本歩行訓練士会として、視覚障害者の駅ホームからの転落事故をなくすためにお願いしたいことがあります。

●視覚障害者の方へのお願い
・白杖操作について受講した経験がない方は、歩行訓練を受けてください。
・受講経験のある方も、よく使う駅のホームの形状や安全な歩行経路等について、いま一度歩行訓練士等と確認してください。
・電車のドアに白杖が挟まれたまま発車してしまう事故もあるため、日頃から白杖のゴムを手首に通さないで白杖を持ちましょう。
・駅ホーム上では、白杖を浮かさず接地したまま、肩幅より少し広く左右に振って歩いてください。
・乗降時には、必ず白杖で床があることを確認してから、足を出してください。
・普段と異なる状況(体調や環境)があれば、駅員や乗客に援助を依頼してください。

●一般の方へのお願い
 視覚障害者を見かけられたら、お声かけをお願いいたします。
・線路に向かって歩いているなど、危険を感じたら、迷わず呼びかけてください。「盲導犬の人、止まって!」など「 (その人が自分に声がかかっているとわかる一言)+止まって!」と声をかけてください。
・無言でいきなり腕や肩をつかむことはやめてください。相手が驚いてしまい、かえって危険になる場合もあります。 ただし、本当に命の危険が迫っている時は、ためらわずに「止まって、危ない!」など声をかけながら腕をつかんで 助けてください。
・命の危険が迫っていない状況の声かけは「こんにちは、何かお手伝いしましょうか?
」を基本にお願いします。声を出すことで、あなたの存在を伝えてください。
●鉄道事業者の方へのお願い
視覚障害者を見かけられたら、お声かけいただき、見守りをお願いいたします。またホームドアの設置など環境面における駅の安全対策を進めてください。視覚障害者の誘導方法や視覚障害者誘導用ブロックについてなど、ぜひ地域の歩行訓練士にご相談ください。
詳細は日本歩行訓練士会までお問合せください。
二度と大切な命が失われないように、日本歩行訓練士会として、歩行訓練や視覚リハビリテーションの普及と向上をはかってまいります。皆様のご協力をよろしくお願い申し上げます。
2020年1月23日 日本歩行訓練士会

以上が、日本歩行訓練士会のホームページに掲載されている内容です。ホームからの転落事故はその後も起きています。全盲の方より、ロービジョンの方の転落が多いようです
。それは、少し見えていることによる勘違いによるものが多いと聞いています。 例えば、ホーム手前の点字ブロックを階段の手前の点字ブロックと思い足を踏み出して転落した、対岸ホームに停まっている電車を見て、それに乗ろうとして転落など、限られた視覚情報に頼る事に起因しています。
白杖を使っていても、歩行速度が速いとホームの端とわかっても止まれず落ちたり、斜め歩行により片足が落ちたりすると転落してしまいます。また、ホームドアがあると思い込むことも大変危険です。
残念ながら我々の病気は進行性です。前は大丈夫だったのに、ということはよくあります。それだけに「まさか!」から命を守るために、正しい歩行技術と慎重さが求められます。
白杖を持てないでいる人は、傘や足で必ず床があることを確認して踏み出してください。そして、早めに白杖デビューに踏み出してください。

※神奈川県内で歩行訓練を受けることができる施設
 神奈川県ライトセンター 045−364−0024
 学校法人横浜訓盲院生活訓練センター 045−641−3939
 七沢自立支援ホーム 046−249−2308
 川崎市視覚障害者情報文化センター 044−222−1611

まずは、電話で問い合わせをしてみましょう。費用はかからないところが多いです。

■災害から命を守る
 〜台風に備える〜

支援会員  白崎 正彦

今回は降雨量の多い台風シーズンに備えて、日本気象協会のコンテンツを参考にロービジョン向けにアレンジしてみました。
1.事前の準備
(1)自宅の危険度とその対策
 台風は事前に備えができる災害ですが、台風が接近してからでは間に合わない対策もあります。準備はしっかりと常日頃から整え、危険か  ら身を守りましょう。事前の準備で大切なのは居住地の危険度を正しく把握し、対処法を確認 して、必要な準備を怠らないことです。
 台風によって「大雨、暴風・強風、高潮など」の気象現象に起因する、洪水、土砂崩れ、土石流、陥没などの様々な被害が発生します。
こうした被害を最小化し、命を守るためには、ハザードマップ(被害予測地図)に基づく危険地域の確認や複数の避難場所を候補として挙げ、安全な避難のために、通路と現地調査を繰り返し行い、避難時の移動に備えます。

※ハザードマップはパソコンやスマホでも検索できますが、目視では確認が難しいので、市区町村の防災担当者に直接面会するか、電話等で説明を聞き、しっかりと確認する事を勧めます。

(2)安全な避難のために
 公的な避難所には次のふたつがあります。
●指定避難所:災害発生後に、被災者等を一定期間滞在させるための施設 
●指定緊急避難所:災害が発生し、または発生するおそれがある場合に、その危険から逃れるための施設
 しかし、河川の氾濫や決壊等で町全体に避難勧告が出ると、市区町村が指定した緊急避難所だけで被災者を収容するのは困難と思われます。所在地の環境によっては、避難場所へ避難するより、丈夫な建物であれば自宅避難や隣近所の2階以上の頑丈な建物に避難させてもらうほうが安全な場合もあります。 避難する場所は、周囲の状況なども総合的に判断して適切な避難場所を決めましょう。

※避難の時に冠水した道などを歩くときは、条件にもよりますが長靴は水が入って歩きにくくなるので、スニーカーや、トレッキングシューズが良いといわれています。また、支援者の誘導を受けるときは傘をさすのが困難ですから、 セパレートレインコートを勧めます。ポンチョが一見楽なように思えますが、風に吹かれると大変危険です。そして足元の安全を確認するために白杖を忘れずに。荷物はリュックに入れて両手を空けます。

(3)家族で避難についての話し合い
 災害時の危険度や避難については、家族で緊急連絡の手段とその方法、そして落ち合う場所などを決めておきましょう。

(4)近隣とのコミュニケーション
 ロービジョンの方にとって、周囲の状況を確実に理解する事は大変困難です。
 併せて、テレビの上下・左右に流れるお知らせはほとんど音声化されていないので、気が付かないことも多いでしょう。できれば避難路の下見や、危険地域の確認、そして地域で行う防災訓練等に、同行支援等の協力がいただけたなら心強いですね。いざというときにお互いに支援できるように、コミュニケーションを取り、助け合いましょう。

(5)被害をより少なくする
 定期的に側溝や排水溝を掃除し、水はけをよくしておきます。また、屋根、塀、壁などの点検・補強も台風のシーズンが来る前に行っておきましょう。

(6)台風防災用品の準備
 □情報関係:懐中電灯、携帯ラジオ、携帯電話等(予備電池も)
 □衣類等:着替え、タオル、救急薬品、貴重品(公衆電話に使える10円玉も)
 □飲料・食料:長期避難に備え、パンやお菓子、果物等(そのまま食べられるもの)
 □貴重品類:障害者手帳、遮光眼鏡など

2.台風が自宅付近を通過する予報が出たら
 台風は、事前に来ることが予想できる災害ですが、台風が接近してからの対策が遅れたために思わぬ被害に遭われる方も多くいます。台風が近づいているというニュースを見たり聞いたりしたら、次の点を参考に対策を考えてください。
(1)最新の台風情報を確認する
 台風の接近とともに進路予想が更新されますので、最新の台風情報を入手し、進路予想や雨雲の動きなどをこまめに気象情報 で確認しましょう。それに併せて注意報・警報がどこで発令されているかにも注意しましょう。そして、雨が強く降りだす前 に、窓の手すりに危険なものが 置かれていないか確認し、家の周りにあるもので強風などによって飛ばされる可能性のあるものは、室内にしまうか、しまうことができない場合は、飛ばされないよう、しっかりと固定しましょう。
(2)窓や雨戸を補強する
 ガラスのひび割れや窓枠のガタつきがないか調べ、窓にテープを貼るなどして補強しましょう。さらに、万が一、窓ガラスが割れた時のために、カーテン等を閉めておくと良いでしょう。

※窓に貼るテープについて、梱包に使う粘着力の強いものには、台風通過後のテープ剥がしが困難な物があります、養生テープ位の粘着力が適当です。

(3)床上の浸水対策をする
 家財や家電などは、浸水の被害を受けないように、高所や2階に移動させましょう。電源プラグから漏電、ショート、感電などが発生する可能性があります。コンセントから電源プラグは抜き、低い位置にあるものは高所へ移動させましょう。

(4)ライフラインの断絶に備える
 断水に備えて飲料水を確保します。浴槽に水を張るなどして、トイレなどの生活用水を確保しましょう。避難に備え、非常持ち出し品を準備しましょう。

3.台風が接近してきたら
(1)適切な避難の判断
 気象庁や市町村から出る情報を基に、在宅避難か、近くの丈夫な建物への避難、指定緊急避難所等への避難かを早めに判断し、非常時持ち出し品を準備して行動に移しましょう。
 一人ひとりが「自分たちの身は自分たちで守る」という意識のもと、たとえ避難勧告が出ていなくても早めに安全な 場所へ避難するなど、 防災意識を高めることが重要です。「多分この道だろう」「ここは安全なはずだ」は危険です。できる限り晴眼者の手を借りて安全を確保してください。

(2)危険な土地では早めに避難
 山や丘を切り拓いて作られた造成地、河川が山地から平野や盆地に出る扇状地、山間部・海岸付近・河川敷は、大雨や洪水、土石流に特に警戒が必要な土地です。

(3)避難勧告に従う
 防災機関などからの避難準備情報に注意し、市町村から避難勧告や避難指示があったら、すぐに動けるように準備し、すばやく避難してください。また、避難勧告が出されていなくても危険を感じたら、自主的に避難してください。

(4)避難の前には火の元の確認をする
 避難する際には、火の元、ガスの元栓を確認し、電気のブレーカーを落とし、戸締まりを確認しましょう。

(5)避難するときは軽装で
 避難の際は持ち物を最小限にして、両手を自由に使えるようにしておきましょう。

(6)避難する
 さあ避難です。避難する際には、もう一度火の元、ガスの元栓、電気のブレーカー、戸締まりを確認しましょう。軽装で持ち 物を最小限にして、両手を自由に使えるようにして避難しましょう。

■サキサキ先生の簡単パソコン活用講座(18)
 〜初めてのZoom〜

役員  佐々木 裕二

コロナ禍の中、JRPS神奈川でも7月にオンラインミニ集会が開催されました。今回のパソコン講座では、オンラインミーティングソフトZoom(ズーム)の使い方について学びたいと思います。
今後、オンライン交流会だけでなく、講演会などのオンライン配信にも活用していきたいと考えています。10月4日開催の得々講座で実施の予定ですので、この記事を参考に是非ご参加ください。
参加申込みに関しては得々講座の案内をご覧ください。

【概要】
Zoomは主宰者(ホスト)から送られた招待メールに記載されているURLを開くことで、アプリのインストールから接続までがほぼ自動的に行われ、ミーティングに参加できるというとても便利なソフトです。利用には、インターネット環境とマイク・スピーカーの付いたパソコン、またはスマホが必要です。ビデオ付きで参加するには、WEBカメラも必要になります。

●Windows10とPC-Talkerで始めるZoom
1.ミーティングに招待のメールを開きます。
2.「Zoomミーティングに参加する」のURLを開きます。
3.Internet Explorerなどのブラウザが起動して、ウィンドウ下端に通知バーが現れます。通知バーにはZoomを「実行」と 「保存」のボタンが表示されているので、実行ボタンで[Enter]キーを押します。
PC-Talkerでは、自動的に通知バーにフォーカスが移動します。実行ボタンが選択されていないときは[Tab]キーで実行、保存、閉じるを移動することができます。
4.ダウンロードとインストールが始まります。途中「ミーティングを起動」と何度か発声があります。インターネッ ト環境などにより、数十秒から数分かかる場合があります。
安全操作の画面(アカウント制御のウィンドウ)が表示された場合は「はい」を選択します。
5.インストールが完了するとZoomミーティングが起動し「名前を入力して下さい。」と読み上げます。テキストボックスにフォーカスするので、自分の名前を入力します。[Tab]キーを押して「将来のミーティングのためにこの名前を記憶する」のチェックボックスに移動し、スペースキーでオンにします。
6.[Tab]キーで移動し、「参加」のボタンを押します。
 「ビデオ付きで参加」、「ビデオなしで参加」、のボタンが現れるので、希望するボタンを押します。
7.「ミーティングのホストは間もなくミーティングへの参加を許可します。もうしばらくお待ちください。」と表示されます。
8.ホストが参加を許可すると、「コンピューターでオーディオに参加」のボタンが表示されます。
9.[Tab]キーを2回押すと「ミーティングへの参加時に、自動的にコンピューターでオーディオに参加」のチェックボックスがあるのでONにします。 10.[Shift]キーを押したまま[Tab]キーを2回押して、「コンピューターでオーディオに参加のボタンに戻り、[Enter]キーを押します。「ミュートが解除されました」と読み上げ、ミーティングに接続します。
11.退出するには[Alt]キー+[Q]を押して[Tab]キーで「ミーティングを退出」を選択し、[Enter]キーを押して退出します。

●すでにZoomがインストールされている場合
 メールで招待のURLを開くと、Internet Explorerが起動し「ミーティングを起動」と読み上げZoomが起動して「ビデ オ付きで参加/ビデオなしで参加」のボタンが表示されますので、どちらかを実行します。
 ミーティングのホストはまもなくミーティングへの参加を許可します。「もうしばらくお待ち下さい」の画面になります。
以降は同じです。

●ミーティング中のキー操作
 [Alt]キーを一度押すとコントロールが表示され、[Tab]キーを押すと移動できます。読み上げたコントロールは[Enter]キーで実行できます。再び[Alt]キーを押すと非表示になります。

●主なコントロールと機能
 ・ミーティング情報:ミーティングID、招待リンクなどが表示されます。
 ・ミュート([Alt]キー+[A]):マイクのミュート(消音)のオン・オフを切り替えます。
 ・オーディオ設定:マイク、スピーカーの設定を変更できます。
 ・ビデオの開始([Alt]キー+[V]):カメラを検出し、ビデオを開始します。
 ・非表示中参加者パネルを開く([Alt]キー+[U]):ミーティング参加者が表示されます。
 ・ローカルにレコーディング([Alt]+[R]):会話を録画します。
 ・退出([Alt]+[Q]):ミーティングから退出の確認ウィンドウが表示されます。
 ・ギャラリービュー/スピーカービュー([Alt]+[F2]):参加者の表示方法を切り替えます。

●iPhoneでZoomを始める(ボイスオーバー使用)
 iPhoneでもPCと同様に、メールに記載された招待URLを開くことで、アプリの入手から接続まで自動的に進みます。
1.ミーティングへの招待メールを開きます。
2.招待URLを開きます。
3.Safari(サファリ)(ウェブブラウザ)が起動するので「Download from AppStore」を実行します。
4.「AppStore(アップストア)」が開くのでZoomを入手します。
5.「開く」を実行します。
6.「ミーティングを開始」を実行します。
7.「ミーティングに参加」のボタンを実行します。
8.ビデオビューウインドウが表示され「Zoomがカメラへのアクセスを求めています。」と聞いてくるので「OK」を実行します。
・ビデオ付きで参加/ビデオなしで参加のどちらかを実行します。
・「マイクへのアクセスを求めています。」と聞いてくるのでOKを実行します。
・「通知を送信します、よろしいですか?」と聞いてくるので「許可」します。
・ミーティングのホストはまもなくミーティングへの参加を許可します。「もうしばらくお待ち下さい」と表示されます。
9.ホストが参加を許可すると「他の人の音声を聞くには、オーディオに参加して下さい。」と聞いてくるので、「インターネット経由で呼び出す。」を実行します。
10.ミーティングに接続・参加できます。
11.左右フリックでコントロールを移動、ダブルタップで実行できます。
12.ミーティングを終了するには「退出」を実行します。

※上記5でZoomが起動しても「待機中」から先に進まない場合は、一旦Zoomを終了し、再度起動して「ミーティングに 参加」ボタンを押し、ミーティングIDを入力し、参加ボタンを押します。パスワードの入力を求められるので、入力 し続行でミーティングに参加できます。

■ちょっと話してみませんか?(ピア相談のご案内)

心理相談員  板嶌 憲次郎

新型コロナウイルスも少し落ち着いたかと思いきや、また予断を許さない状況になってきました。このような状況ですと、視覚に障害を持つ私たちは今まで以上に困ったことが増えてきます。まただんだん進行していく私たちの病、悩み事や困りごともだんだん変化してきます。こんなこと相談しちゃいけないとか、あんなこと人様には言えないとか思っている人もいらっしゃるみたいですが、まったく問題ありません。言いたいことを吐き出して、少しでも心を軽くしてみませんか。当然、お話された内容の秘密は保持することをお約束します。
また特定非営利活動法人 神奈川県難病団体連絡協議会でも、同様の対応をしております。あなたのお電話をお待ちしております。

●対象 RP患者とその家族
●聴き手 プロフィール
 板嶌 憲次郎(イタジマ ケンジロウ)
 1970年(昭和45年生まれ) 49歳
 約29年前(20歳頃)にRPと診断される。
 約19年前(30歳頃)障害者枠で転職。金融系の会社にて事務を担当。
 現在は盲導犬フレアと一緒にセーリング、ゴルフ、クライミング、ヨガなどを楽しんでいます。
●連絡先
こちらのフォームから相談希望と書いてご連絡下さい。

特定非営利活動法人 神奈川県難病団体連絡協議会でも相談を受け付けています。ただし、新型コロナウイルス対応で一部通常と異なっている場合がございますので、直接ご確認をお願いします。

●電話相談
日時:月〜金曜日 11時〜16時
電話:神奈川県難病団体連絡協議会 045−651−0258
※ご相談の内容、個人情報については「守秘義務」を厳守いたします。

■読書の薦め

横須賀市  内田 知

●『高校事変シリーズ 1〜6』 松岡 圭祐(まつおか けいすけ) 著
 本書のシリーズ1作目を、会報93号で紹介しました。2作目は、まだまだ先と思っていたら、なんと(2〜6)と シリーズ5作分が間も置かずサピエに登録されました。
 半グレのリーダーで、元死刑囚を父に持った女子高生のダーティーヒロインを描いたハードアクション小説。
【1作目】主人公の通う高校に総理大臣が訪問。そこに、謎の武装集団が乱入、主人公と武装集団との戦いが始まる。
【2作目】同じ児童福祉施設に暮らす姉妹から、姉がいなくなった、行方を捜してほしいと姉妹の妹から懇願され、主 人公が行動を起こす。そして悪党どもは、主人公に倒されていく。
【3作目】熱帯林に囲まれた孤島に連れて来られた主人公。そこで行われていたのは、狂人的な規律によって運営され ている学校だった。主人公は島からの脱出を決意する。そして、彼女の後ろには脱出を決意した少年少女たち。彼ら の前に立ちはだかるのは、武装した教師たち。どこにある島かも知らない主人公たちの、死を覚悟した脱出劇が始ま る。
【4作目】スキー場に向かう中学生たちを乗せたバスが事故を起こす。そのバスには、主人公の弟が乗っていた。事故 から難を逃れた中学生たちは、廃校となった小学校を見つけ救助を待った。だが、そこで殺人事件が起き、主人公の 弟は自殺した。犯人は弟だという周囲の言葉に異論を唱え、主人公は弟の汚名を晴らすために動き出す。
【5作目】主人公が唯一心を許した友人から助けを求められた。友人が閉じ込められていたのは、農業高校を隠れ蓑に した毒物製造工場だった。主人公は救助に向かう。そして、思いもよらぬ者と出会う。こうして三人は、危険地帯か らの脱出を図る。ラストシーン。主人公は原宿にいた。なぜ彼女は原宿に……。最後の緊迫するシーンに驚かれよ。
【6作目】舞台は沖縄。修学旅行先の沖縄で、ふとしたきっかけで貧困家庭を食い物にするヤクザたちの存在を知る。 そのヤクザたちをコテンパンにする。ヤクザを痛めつけた事で、同世代の女子たちが民間軍事会社の元軍人たちの手 によって残虐な行為を受けている事を知る。怒りに燃えた主人公。だが戦いの場は、米軍基地内。信じられない戦い の末に、少女たちを救出。すべての戦いは終わったかに見えたがしかし、ラストシーンに思わぬ敵が現れる。戦いの 場は、空の上。主人公は、同級生や他の乗客たちを守る事ができるのか。興奮度100パーセントのラストシーン。 読まないと損するよ!
 シリーズを通して、なんでもない家庭用品から雑貨まで主人公が手にすると、殺傷能力を持った武器と変化する。時 には、爆弾まで作ってしまう。それを武器に、目の前の敵を倒していく。恐ろしいほどの知識を持った女子高生ダーティーヒロインの活躍を楽しまれたし。

●『それでも、僕は前に進むことにした』 こかじ さら著 
 視覚障害者を主人公にした作品を何冊か読んできた。読み終えての感想は、視覚障害者の描き方がいまいちだなあ、 と思ってしまう。これも、ウッチャんが当事者であるのが原因なのかもしれないが、病気を告知された人間の心理を もっと深く突きつめて表現してほしいと思ってしまう。
 さて、本書だが病気を告知された人間の心模様を、これまで読んだ作品にはない描写で深く描いている。主人公は、 広告制作会社で働く若手AD。眼の異常を感じ病院へ。彼は、病院でRP(網膜色素変性症)と告知される。そして 、主人公の苦悩が始まる。物語では、RPの症状・病気の進行がどう進むかをかなり正しく描いている。
 ウッチャン的には、そんなに症状の進行は早くない事と物語の後半に描かれる視覚障害者として生活するための訓練 を受けるシーンを、もっと細かく表現してほしいとツッコミを入れたくなったぐらいか。告知された時の驚きと治ら ない病気と言われた事への心の動揺に、失明してしまうかもしれない恐怖。少しづつ病気が進行して、不自由を感じ る時の心理描写。
 仕事ができなくなると考え、これからの生活への不安。運転免許証を返納する無念さ。覚悟を決めたはずの心が揺れ る。白杖を持って歩く事への中途視覚障害者の心情。今まで普通だった事が、障害になる。なんで自分が、こんな思 いをしなければいけないと思う憤りが爆発して、周囲の人への八つ当たり、心配かけたくないとの思いが、自分の心 を孤独にしていく。
 視野が狭くなり、見たいものが見えない苛立ちと悔しさ。みんなが見えているものが見えない悲しみ。どん底に落ち ていく心を、どこで止めるのか。這い上がるしかない心に、どうすれば勇気を与えられるのか。中途視覚障害者の思 いを、よくここまで描けたと感心させる展開。視力が必要な映像と言う世界で生きる主人公に登場人物たちの言葉と 行動を借りて著者は、どんな試練を与え、どんな励ましのエールを送ったのか。後半は、感涙の連続で読み終えた。
 本書は、フィクションである。よって、主人公の思いを理解できる人物が登場する。ラストは、前を向いて歩く主人公が描かれている。現実は、そんなに甘くはない。主人公のように、うまく行くより、挫折の連続だろう。だが、そ んな現実に生きる視覚障害者に、前を向く勇気を与えてくれる言葉がいくつもつづられている。文章を追いかけられる視力がある方は、書店で、本書を買い求めて読んでほしい。
 生活に不自由を感じながらも、白状を使わず歩ける方。RPと告知され不安な思いから逃れられない方。そんな方た ちは、絶対ヨムベシ?

●『任侠シネマ』 今野 敏(こんの びん) 著
 組員6人しかいない小さなヤクザの一家・阿岐本組(あきもとぐみ)。だが、彼らは親分の指示で学校・出版社・病 院・銭湯の経営再建をやり遂げて来た。今回は閉館寸前の映画館の再建。
 組事務所に、平気な顔をしてやってくる女子高生。阿岐本組をつぶしにかかるマルボー(暴力団に関する事案を取り 扱う警視庁組織犯罪対策部や、各道府県警察刑事部捜査第四課の通称)の新任係長。組事務所に、出前を届けに来る アルバイトの若者などなど、本筋を離れたサイドストーリーの脇役たちが物語をおもしろくしている。映画が好きで 、映画館が大好きな者たちのために小さな映画館をどう守るのか。
 ヤクザに厳しいご時世に、世のため人のため、今日も阿岐本組が奔走する。物語の中で阿岐本組の親分が、映画館の 経営者に語る一言一言が読む者の胸に染みわたる。再生時間約7時間。久しぶりに、カップメンを食べながらの徹夜 の一気読み。

●『勿忘草の咲く町で 安曇野診療記』 夏川 草介(なつかわ そうすけ) 著
 田舎の小さな総合病院に、研修医の青年がやってきた。通院してくる患者も、入院している患者も、緊急搬送されて くる病人も、ほとんどが高齢者ばかりの病院だった。そんな病院で、研修医の青年が体験するのは、高齢者医療の現実だった。命の尊厳とは何か? 答えのない問いに必死で向き合う若き研修医。研修医とともに、懸命に働く看護師 との出会いと、恋愛を絡めた感動の連作短編集。
 現役の医師であり、ベストセラーシリーズ『神様のカルテ』の作家でもある著者が描いた新たな医療小説。『神様の カルテ』では、夏目漱石を敬愛する研修医が主人公だった。
さて本書では、どんな研修医を描いたのか? 読んで確 かめられたし。

<投稿コーナー>

■みんなの川柳・俳句・短歌

神奈川MLのみなさん

●川 柳
【横浜市】 渡邉 千登世
1 出かければ 何も変わらぬ 人の群れ
解説:依然としてコロナ禍の脅威はあるのに行き交う人は私も含めて、一見何事もないように歩いている。
2 バカみたい メガネ探せば かけていた
3 ストレスは 食事作りに 会話かな
解説:食事作りは確かにストレスだが生きる為には仕方ない。会話とは老夫婦の噛み合わない様子をいう。
4 文字忘れ 空にキャンバス 書いてみる
解説:文字を書く機会がほとんどないので漢字はどんどん忘れていく。それではいけないので、たまに指で書いて思い出す。
5 雨降りは 夫婦でひっそり 孫思う
解説:孫が我が家に来る時は自転車なので、雨の日は残念!梅雨の晴れ間を期待しよう。

【横浜市】 清水 秀雄
1 避難所は コロナ共存 足向かず
解説:今後の天災+コロナ被害を心配します。
2 リュック背負い 午後のお散歩 買い出しに
解説:運動不足解消策です。
3 解除され 心のカギを 開け放す
解説:時々締めないと危険です。
4 オンライン ライブで繋ぐ 顔と声
解説:Zoomでテレビ会議が自宅で可能。たいしたものだ。
5 キャッシュレス コロナが普及 背中押す
解説:現金のやり取りが敬遠されています。

【小田原市】 井手 章
< 2020年夏号 エトセトラ川柳 >
1 おっかない PCR検査 やれてない
解説:6月7日(日曜)38.3度の高熱が出てもしかしてと思い、救急車で運ばれましたが、寝冷えによる胃腸炎で、コロナでなく安心しました。PCR検査はできませんでした。
2 座りたい ゴホンと言えば 席が空く
解説:以前は、ゴホンと言えば龍角散でしたが、今は咳き込むと席が空きます。
3 早すぎる ゴートゥーキャンペーン 恐ろしや
解説:新型コロナウイルスを撒き散らしますね。英語のgo toは、とある場所から離れて去って行くという意味です。come toは、話し手の心理的視点が相手の所にある場合において、相手の所へ行くという意味になります。
4 小田原の コロナ会館 名が売れて
解説:……と思っていたらTVニュースの全国版でも紹介。田舎町のちょっとした、アミューズメント(ボーリング、カラオケ、サウナなど)イベント会場です。
5 小田原は 富士や箱根に 守られて
解説:「令和2年7月豪雨」の線状降水帯で河川の氾濫による、亡くなられた方へのお悔やみと、被災された方々にお見舞いを申し上げます。
6 快挙成す 藤井七段 新棋聖
解説:暗い話題の中、藤井聡太七段17歳11か月、棋聖30年ぶりの最年少記録更新です。おめでとう!

【横浜市】 吉川 弘
1 国会閉め 賞与たっぷり お休み中
解説:何ともお気楽な人たちです。
2 穏やかな 神奈川の海 波一つ
解説:何だかよくわからない騒ぎでした。
3 眩しさが 増して目の中 キラキラと
4 屋内も 遮光眼鏡の 出番増え
5 こんな時 愛用眼鏡 真っ二つ
解説:何とも大変なことになりました。

【横浜市】 佳純目 譲司
1 人付き合い コロナ教える 濃さ薄さ
解説:気が付けば「電話もメールも……」とならないように。
2 無制限 お仕事好きの テレワーク
解説:時間外制限無し、だが残業代無しは辛い。
3 壁家具に ぶつかるなよと 抗議する
解説:実は抗議するのは壁家具の方。さらに見えづらく……。
4 スーパーボラ 地元災害 一早く
解説:スーパーボランティアの尾畠さん、大分の豪雨災害で単独出動です。
5 GoToは 政府サイドの フライング
解説:世論の声はそのように聞こえます。

●俳 句
【横浜市】 浅井 進
1 紫陽花の 雫光りて 土に落つ
2 梅雨晴間 カフェの傘立て あふれおり
3 風もなく 池辺に寄する 蓮の花

【横浜市】 森田 祐吉
1 梅雨の夜も 蛍の光 追い求め
2 なぜ豪雨 しとしと梅雨が しのばるる
3 こいねがう コロナ終息 七夕に

●短 歌
【横浜市】 森田 祐吉
1 コロナでも お困りですか 天の声 触れられし手に 感謝のきわみ

【横須賀市】 眞田 京子
1 明け染めし 窓辺に凛と 朝顔の 紫の花 一輪咲きぬ
2 何時しかに 種の零れし 苦瓜の 伸びゆく蔓に 黄花(きばな)咲き初む
3 岩肌を 落ちくる滝の 水飛沫(みずしぶき) 肌身に沁みて 涼しさつのる

■ウッチャンの落書きストーリー【後編】
 〜善晄(よしてる)とウッチャンの落書きショートストーリー〜

横須賀市  内田 知

以下の物語は、実話にチョットだけフィクションを加えたショートストーリーです。
また、前編、中編はそれぞれ前々号、前号に掲載されています。

パート5 (活動資金獲得への挑戦)
支部はできたものの、活動費は……と言っていい時期の役員たちは、すべて持ち出しで動いていた。保健所通いの交通費も自費。かろうじて、保健所から謝礼としていくらかもらえるようになった。それでも足りない。JRPS神奈川の存在をもっと広めたい。そこで善晄は、大バクチを打つ事にした。それは、視覚障害者のための福祉機器の展示会開催であった。支部に多少の蓄えはあったが、展示会を催せるほどの蓄えはなかった。それを補填するために、出展業者からの出展料で補うことにした。この方法によって赤字を出さずにすんだのだ。
こうした善晄と役員たちの努力が報われる。それは、患者である当事者たちの手によって開催されている事に、驚きと感動を感じた人たちがいたからだ。その人たちとは、神奈川の眼科医会の会員である先生たちであった。会場をせわしなく動いていた善晄に声をかけ、眼科医会として寄付を申し出てくれたのである。眼科医会からの寄付は今も続けられ、20年を超えている。この寄付によって、支部活動は加速した。だが善晄には支部活動が順調に進むだけでは、JRPSの目的は達成されていないと考えていた。それは、治療法研究のための基金へ、支部として納入できるかできないかの不透明な状態だったからである。
基金へ納入できる資金をどう集めるか悩んでいた善晄に、ウッチャンからチャリティーコンサートの企画が提案された。大丈夫かという思いもあったが、自ら提案してくるのは初めての事。自信があるんだろう、と役員を説得して、ゴーサインを出した。
ウッチャンと会員の3名の若者は動いた。ちらし、ポスター、チケットを作成。会場も日程も出演者も決まった。あとは広報してチケット販売に動き回るだけとなった時期に、善晄は 「よくここまで持って来られたな」
とウッチャンに言った。
「やるって言ったのは俺だからね。それに、最初に声をかけたエリチャンがいるからね。いつもコテンパンにされているけど、コンサートのノウハウを持っているのは俺だけとわかっていてくれてるみたいで、どこまで行ったら自分の考えを引いて話を終わらせて、どうまとめるかを考えてくれていると思う。今じゃエリチャンがチームのまとめ役になってくれてるから、俺の役目は終わったようなもんだよ。俺に残されている役目は、必ず収益を上げる事、友達減らしてでもチケットを押し売りして必ず黒字にしてやるんだ」
「友達減らすって、減らすほど友達いるのか」
「そうか、減らすって言うより、チケット押し売りする友達がいないのを忘れてた」
と笑うウッチャンを見ながら、善晄は何をやっていても与太郎のままだなと苦笑いした。
開催されたロックコンサートの収益は、もう少しで10万に届く金額となった。
そして数年後ウッチャンは、エリチャンの父親とも何年振りかのチャリティーイベントをやる事になる。だが、相棒となるはずのエリチャンの父親が突然の病魔に襲われ、動けなくなる。自分を相棒に選んでくれた人のためにも、このチャリティーはやると言ったウッチャンの発言を耳にした善晄は、ウッチャンの影となって動き出す。チャリティーイベント・ペリカン寄席はこうして始まり、4年間続けられた。
(娘とコンビを組んだ後に、娘の父親とコンビを組んでチャリティーをやることになるとはなあ。)
と、善晄は思った。

パート6 (本部事務局長への転身)
神奈川の支部長になって5年目、善晄は長く頭をやるもんじゃないと考え、支部長を支部設立メンバーのひとりである大久保さんに後を託して、自身は本部の事務局長となった。
ウッチャンは大久保さんから
「暴れん坊の中村さんが乗った神輿を担いできたついでに、私の乗った神輿も担いでくれないか。中村さんみたいに暴れたりしないから」
と言われ、
「わかりました」
と答えるしかなかった。返事をした後
「それじゃあ、福祉部長ってことで頼むね」
と言われ、ウッチャンは似合わない肩書を背負うことになったのである。善晄に詰め寄り
「勝手に支部長辞めんなよ、大久保さんに福祉部長って頼まれちゃっただろう」
「福祉部長か、いいんじゃないの。俺の下で覚えた事を生かしてがんばってくれよ」
「あんたの下で覚えた事なんかなんもない。だいたい、本部で何やるんだよ」
「事務局長だよ、まぁ本部の活動のまとめ役っつうところかな」
「まとめ役だぁ、今まで本部をひっかきまわしていた人間がよく言うよ」
「コラさとる、お前が何かやらかした後始末を誰がやってくれたか考えろ」
「うるさい、さとるって言うな」
「ウッチャンと呼んでほしかったら、大久保さんを手助けする事を考えろ」
「それはそれ、これはこれで、とにかくさとるって言うな」
「なんでここをツッコんでくるんだよ。ツッコむ所が違うだろう」
「違わねぇよ、大久保さんに頼まれた所は覚悟を決めてある」
その言葉に
「わかった、わかった」
と善晄は答えながら心の中で、ありがとうな、と呟いた。

パート7 (善晄、鹿児島へ)
本部の事務局長となった善晄は、ウッチャンが思った通りに本部をひっかきまわしていた
。ウッチャンは、大久保さんの手助けを自分なりにしていた。そんな年月が流れた頃、善晄に異変が起きた。それは、鹿児島で暮らしている母親が認知症を患い、誰かが介護しなければならなくなったことだった。善晄は兄弟の中で一番心配をかけてきた自分が面倒を見ると決意して、鹿児島に帰ることにした。それを聞いたウッチャンは、高野、青木、仲泊の3名の先生に出席してもらってのお別れ会を神奈川で企画した。参加者は30名に達しての大宴会となった。そんな集まりが終われば、別れを惜しんでしんみりするのが普通なのだが、善晄とウッチャンはツッコミ合いの会話をしていた。
「みんなからもらう記念品は、電気カミソリがいいなんて要求してきやがって、何考えてんだよ」
「何かプレゼントしようと、ウッチャンの事だから考えているだろうと思ってさ、何にしようか悩ませるのは悪いと思ったから、今欲しい物を言ったんだよ。悩まず用意できたんだからいいじゃんか」
「よくねぇよ。自分の立場ってのを考えろ」
「どう考えるんだよ」
「要求なんかしないで用意されたものを受け取ればいいんだよ」
「それは俺の質問の答えになってないぞ。どう考えるんだって聞いてんだよ」
「それはだなあ、ウーン。言葉が浮かばない」
「それ見ろ。俺に勝とうってツッコミ入れるなんざ10年早い」
と善晄は笑った。
「うるさい。鹿児島の山ん中にサッサと帰って熊に襲われてしまえ」
「馬鹿かお前は、鹿児島に熊はいないんだよ」
「んじゃ、キツネか狸に騙されてしまえ」
「そうか、狸はいるからな。気をつけるよ」
これに言い返そうとしたウッチャンより早く
「くだらない話はそこまで、お父さん帰るわよ」
と奥さんの声。
「わかった」
と返事をする善晄のそばに来た奥さんが
「ウッチャン、今日はありがとうね」
と言った。その言葉に返す言葉が浮かばず、ウッチャンはうつむいてしまい 「奥さんもお元気で……」
と言うのがやっとだった。

パート8 (善晄、エロオヤジ化する)
善晄が鹿児島に帰った後も、ウッチャンとの毒舌合戦は電話のやりとりで続けられていた。
そして、年一回の直接対決も行われた。善晄がJRPS鹿児島の代表として代議員会に出席するために東京に戻ってきた夜に、横浜で善晄とウッチャンは、相手をけなしながら酒を飲んでいたのである。この飲み会に、山田さんも参加するようになる。
ウッチャンの毒舌に慣れていた山田さんは、ふたりの会話をニコニコしながら聞く余裕を見せた。善晄に会うのが3回目ぐらいになった飲み会の帰り、横浜駅構内で他の参加者に別れを告げる挨拶をしていたウッチャンの耳に
「フジャ」
と、叫び声に似た声が聞こえた。
自分の隣に善晄、そのそばに山田さんがいた。声を発したのは山田さんとわかった。発したワケも、すぐに察したウッチャンは、善晄の頭を叩いて言った
「コラ、エロオヤジ何やってんだ」
その言葉に振り返って善晄は言った。
「ウッチャンが言ってたように、ヤマッチのオッパイが大きいか確かめるためにちょっとつまんだだけだよ。これは、かなりのもんだ」
と答えた善晄に
「バカタレ」
とウッチャンが善晄の頭をまた叩いた。
「いてぇな、叩くなよ」
「叩かれるようなことしてんからだ」
「ウッチャンも叩かれるようなことしてみるか」
「バカタレ、そんなことできるかよ」
「そうか、残念だなあ。気持ちがいいのになぁ」
その言葉に(コリャ、かなり酔ってやがんな。帰りは大丈夫かな)と心配しながら、ウッチャンは
「ヤマッチ、変なことされたら『フギャ』じゃなくて、『キャー』だろう。歳は取っていても嫁入り前の身なんだから『フギャ』なんて、みっともない叫び声を上げるんじゃない」
その言葉に
「はい、今度は気をつけます」
の山田さんの返事に
「それじゃあ、試しにもう一回」
と手を伸ばした善晄に山田さんは
「だめです」
と一歩下がって善晄に言った。
「アーア、さとるが余計な事言うから、せっかくのチャンスを逃してしまったじゃんか」
「うるさい、さとるって言うな」
このままでは、また始まってしまうと思った山田さんは二人をけしかけ、それぞれの改札口へ誘導していった。

パート9 (携帯電話が鳴る)
ある日の夕方、ウッチャンはいつものようにサピエのサイトを開いてデイジィの新着案内を見ていた。そこに、めったに鳴らない携帯電話の着信音が鳴った。その電話が、自分を悲しみのどん底に落とす知らせとは思うはずもなく、気軽にウッチャンは通話ボタンを押した。令和元年12月25日の事だった。

エピローグ
善晄は、白杖を左右に振りながら歩いていた。そして、ひとつの橋のたもとに辿り着いた。立ち止まり首を傾げる。周囲に目を向けると、自分を追い越して橋を渡る人たちが見えた。
善晄は、ハッとして自分の足元を見る。自分の足が見える。左手を顔に近づけ、開いたり閉じたりした。それも見える。右手に持った白杖も見える。どうして……と思った瞬間、もしかしたら、とひとつの思いが心をよぎった。まさか、とその思いを振り切ろうとしても、その思いは消えてくれない。
認めるしかないか。しょうがないよな、ここまで来ちゃっているんだから……。そして、改めて右手に目を向ける。ここから先は、白杖はいらないんだろう。でもな、苦労を共にした相棒みたいなもんだからな。持っていくか。と善晄は白杖を肩に担いで橋を渡り始めた。橋の途中で立ち止まり、何かを思い出した。そういやぁアイツが言ってたなあ。 「俺があの世ってとこに行ったら、おれにこんな運命を背負わせた神様ってやつを見つけ出して、『大変だったんだぞ、つらい思いをさせやがって』って言って、思い切りブン殴ってやるんだ。」
それを思い出した善晄は、アイツより先に俺がやっちまおう。と笑った。顔をうつむかせて身体を引きずりながら橋を渡る周囲をよそに、善晄は胸を張り、白杖を肩に担いで橋を渡っていった。橋を渡った善晄の前は白い霧に包まれていた。善晄は 「みんなありがとう」
と苦く呟くと、一層胸を張り、霧の中へと足を進めた。

〈完〉

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音声機器はいろいろ便利にございます。
単眼鏡 弱視眼鏡 など

光学堂ロービジョンルーム
〒220−0051 横浜市西区中央2丁目6−5 めがねの光学堂内
毎週水曜日定休日 営業時間:am10:00〜pm7:00
完全予約制:ご来店の際は必ずお電話でご予約して下さい。
045−290−0048
詳しくは、http://www.kougakudo.jp/
検索 光学堂 横浜市視覚障害者用福祉機器 / メガネ・特殊メガネ 取扱店

■アイネットワーク

 アイネットワークに要望されていたテーマで残っていた「通帳読み上げ」を開発しました。
 交流会などに参加し、見えにくい、見えない、というかたがたの、ご意見、ご要望をお聞きし、他社に 無いもので、新しいモデルを開発し、用具を選ぶとき選択の幅が拡がることを目指しています。

 日常生活用具の「活字文書読上げ装置」の項目で給付を受けられる「アイビジョンスピーチオ」
 見えないというかたも、音声ガイドを聞いての簡単操作で、新聞、雑誌、本、郵便物等の活字文書を、音声で読み上げできます。この項目の給付要件である、SPコード(音声コード)を解読して読み上げします。「読書器」とは別の給付項目ですから、拡大読書器を使用中のかたも、手帳が1級と2級の人は、全国の、どの自治体に、お住まいのかたも、給付を受けられます。
 給付限度額と同じ 99,800 円で、超過負担はありません。所得のあるかたで1割負担のかたは、9,980 円の負担です。地方税が、非課税のかたは、負担を免除されますので、無料です。
 店には置いてないので、試してみたいというかたに、1週間程度の貸出で対応しております。
 送料を含め無料です。ご希望があれば、末尾に記載のところへご連絡ください。

 これから下の、読書器は、どのモデルも、所得のあるかたで1割負担のかたは、基準額に対し19,800 円の負担です。地方税が、非課税のかたは、負担を免除されますので、無料です。

1) 日常生活用具の「読書器」の項目で給付を受けられる「アイビジョンデジタルノート型」
 簡単操作板の穴に、左の穴から右隣へ順にタッチする簡単操作で、活字文書の読み上げと15.6インチの画面に、拡大・縮小・移動の画面表示ができます。高性能にカスタマイズした本体で出荷します。カメラ無しは基準額と同じ 198,000 円、カメラ付きは 208,000 円。

2) 日常生活用具の「読書器」の項目で給付、「アイビジョンデジタル見る・聞く・テレビ画面型」
 画面にしゃべるテレビ32インチを採用、本体から出ているケーブルで接続して画面とする。
 本体の、簡単操作板の穴に、左の穴から右隣へ順にタッチする簡単操作で、活字文書の 読み上げと、画面に、拡大・縮小・移動の画面表示ができます。本体を使わないときには、 アンテナを接続し、しゃべるテレビとして視聴できます。テレビを含み、198,000 円

3) 日常生活用具の「読書器」の項目で給付を受けられる「アイビジョンデジタル書見台型」
 上下、左右に動く構造の台に乗せたタブレットのカメラで、書見台の文書を撮影、拡大・縮小の画面表示。眼圧が上がると言われているかたも首を前傾しないで使えるので安心です。
 画面は約10インチです。特殊構造の台3点を含み 198,000 円

4) 日常生活用具の「読書器」の項目で給付、「アイビジョンデジタル見る・書く・動く」
 机上に置いた書面の上の方で、カメラが、前後、左右に動く方式なので、省スペースです。画面に、拡大・縮小表示、付属のケーブルで、大画面テレビに接続可。 198,000 円

5) 日常生活用具の「読書器」の項目で給付、「アイビジョンデジタル見る・書く・テレビ画面型」
 画面に録画再生付きしゃべるテレビ32インチを採用、本体から出ているケーブルで接続して画面とする。机上の書面を、カメラで撮影、画面に表示。書面に書ける。本体を使わない時には、アンテナを接続し、録画再生付きしゃべるテレビとして視聴できる。テレビを含み、198,000 円

6) 日常生活用具の「読書器」の項目で給付、「アイビジョンデジタル通帳読み上げ」
 通帳の残高と日付を、音声ガイドを聞き、穴に指でタッチし、1項目づつ、読み上げる。
 使用許諾の条件から、100台限定での生産となります。 198,000 円

読書器と活字文書読上げ装置で、読める世界を拓く アイネットワーク有限会社 担当 みやたけ
電話&FAX 042-583-7450 携帯 080-8034-1163 メール aivision@js7.so-net.ne.jp
〒191-0055 東京都日野市西平山5-23-12 上記モデルの紹介CDとカタログをお送りします(無料)
スピーチオ、SPコードは株式会社廣済堂の登録商標です。しゃべるテレビは三菱電機の商品名です。
アイビジョンはアイネットワーク有限会社の登録商標です。官報で、視覚障害者用拡大読書器は、視覚障害者用読書器と改正、と厚労省から告示されましたので、これに従い表記を変更しました。
自治体により、視覚障害者用拡大読書器、視覚障害者用音声読書器で運用されています。


(裏表紙)
1971年 8月 7日 第三種郵便物認可(毎月6回 1の日・6の日発行)
2020年8月6日発行 SSKA 通巻 第10311号
  96号KANAGAWA 2020autumn

編集後記

■2020年を迎え、多くの人達が今年こそ災害のない、健康で明るい一年となるよう祈願したと思います。
しかし、残念ながら新型コロナウイルス感染症の拡大により、東京五輪・パラリンピックの一年延期。日常のライフスタイルを大きく変えざ るを得ない状況となりました。
また、7月には九州地方や山形を襲った集中豪雨による河川の氾濫。再び大きな被害を被り、多くの人命や財産 が失われることになりました。

50年に一度といわれる大雨が、毎年のように日本各地に発生しています。 コロナ禍により私たちの日常に大きな変化をもたらし、私たちが今まで経験したことのない時代となりました。 情報難民とされる視覚に障 害を持つ私たちが安全で健やかに日常を過ごすためには、普段の備え(心掛け、知識 )を養う必要が大事ですね。本誌掲載の「災害から命を守る」で知識を拡大しましょう。(佐藤)


■JRPS神奈川会報は下記の3形式でお届けしています。
 変更を希望されるかたは、下記連絡先までご連絡下さい。
1)墨字版:印刷物、大きめのゴシック体の文字
2)デイジー版:デイジー形式の録音CD
3)メール版:テキストメール


◆神奈川県網膜色素変性症協会(JRPS神奈川)連絡先

・事務局  溝田 隆之
     〒237-0067 横須賀市鷹取*****
     TEL・FAX:046-********
・会  長  阿部 直之   
     〒213−0011 川崎市高津区久本********
     TEL:080−*******
     E-mail:********
・編集  JRPS神奈川編集部
        E-mail:**********
       
発行人 特定非営利活動法人障害者団体定期刊行物協会
〒157-0072東京都世田谷区祖師谷3-1-17
          ヴェルドゥーラ祖師谷102号室

http://www.rp-k.com
定価 200円
(おわり)