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●「得々講座」医療講演会の報告
  〜網膜色素変性症の白内障手術の適応とは?〜

役員 今村 伸也

 1月28日、冬晴れの穏やかな日に開催されたこの講演会は、講師に東京慈恵会医科大学・葛飾医療センター准教授の林孝彰先生をお招きしました。今回のテーマは私達が身近に直面する話題という事もあり、大変闊達な講演会となりました。本稿では林先生の説明内容の要旨を簡単に記載致します。詳細につきましては、JRPS神奈川のホームページで3月末まで当日の音源をお聞き頂けますので、そちらを参照下さい。

マイクを持って話される林先生
  (写真は講師の林先生)

 まず最初に、再生医療の最新トピックをお話し頂きました。
 その一つ目は、神戸市民病院と大阪大学で、他人由来のiPS細胞から分化、樹立した網膜色素上皮細胞の移植成功の報です。また二つ目は、神戸理化学研究所のもので、マウスiPS細胞から分化、樹立した視細胞が対極細胞とシナプスをし、光に応答し神経節細胞でもその応答が検出された、というものでした。
 最先端の技術が着々と進行している嬉しい話題のご提示でした。

 そして本論に入り、今回は(1)網膜色素変性症に合併する「白内障」を手術すべきか?(2)挿入する眼内レンズは着色と非着色(透明)のどちらが有用か?についてでした。
 (1)については初めに先生より、眼球の構造や白内障の発生部位、種別、晴眼者との発症年齢差等を詳述頂きました。また、手術の様子を動画映像を用いて、リアリティ溢れる情報をご提供頂きました。そして、九州大学・千葉大学の最新論文を基に、以下見解を示されました。

 <白内障手術の検討には以下3つの指標が重要>
 @ 視力
 A 視野(ハンフリー《Humphrey》中心視野)
 B OCT(オプティカル コヒランス トモグラフィ《Optical Coherence Tomography》)のエリプソイド(EZ)値
 OCTとは、光干渉断層計と言い、黄斑部の詳細なデータが取得できる計器で、現在多くの眼科医が利用しているとのことです。
 これによると、患者はEZ値で以下3つに層別され、グレード(Grade)3であれば、手術後の視力改善見込みが高いということです。
・グレード1…EZ値異常:術後視力0.6以上の獲得率=0%
・グレード2…EZ値少し異常:術後視力0.6以上の獲得率=25%
・グレード3…EZ値正常:術後視力0.6以上の獲得率=74%
 よって白内障の手術適応は、白内障自体の程度と、上記OCTの兼ね合いで決まるという事です。
 私はこのOCTのEZ値を初めて知りましたので、次回検査時に値を確認しようと考えております。
 また白内障を専門とする医師は、総じて手術を奨励し、RPを専門とする医師は、手術に慎重という傾向があるそうです。手術中の突発的なアクシデントも、一般の方に比べ高いので、経験豊富な眼科医による執刀が望ましいとの事でした。

 (2)の挿入する眼内レンズの選択については、着色・非着色レンズ双方のメリット/デメリットについて、様々な意見があるものの、林先生としては着色レンズの選択が適当との見解でした。

 講演会後も様々なご質問・ご相談が寄せられまして、「是非林先生に診て欲しい」というご意見が寄せられていた事が、大変印象的でした。
 また、講演会に参加された方は56人(役員9人含む)で、うち9人は非会員でした。
 ご参加いただいた皆様と、ご多忙な中、講演をいただきました林先生に、心から感謝申し上げます。


 録音の公開は終了しました。

 **この講演会は「NHK歳末たすけあい」の配分金により開催しました。**